日本文学
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Print ISSN : 0386-9903
特集・古代文学における異言語
律令・仏教・文学の交錯
—唐代口語語彙「顔面」をめぐる講説の場—
藏中 しのぶ
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2011 年 60 巻 5 号 p. 31-39

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抄録

唐代口語語彙は、律令・仏教・文学という学問の講説の場で、最新の唐代の学問を継承し、中国語話者をふくむ講師によって口頭で講じられ、講義録として私記類に記録され、さらにそれらが類聚編纂されて古辞書・古注釈類をはじめとする後世の文献に定着した。

講説の場として、律令学の大安寺における「僧尼令」講説、仏教学の唐僧思託による漢語を用いた戒律経典の講説、文学の『遊仙窟』講説という三分野の学問の場をとりあげ、その担い手が律令官人・在俗仏教徒・文人という性格を兼ね備え、彼らが学問としての講説の場で唐代口語という異言語を共有していた状況をあきらかにした。

講説の場では、養老年間以前に成立した会話辞書・口語辞書『楊氏漢語抄』『弁色立成』等が工具書として共通して使用されていた可能性を指摘し、律令学・仏教学・文学の諸分野が交錯する多言語・多言語状況を論じた。

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