日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
特集・古代文学をめぐる、新たな先学との対話
大正期を生きた池田亀鑑
――「知」と「感」の相克の背景――
吉野 瑞恵
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2012 年 61 巻 5 号 p. 33-43

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抄録

『源氏物語大成』に結実する『源氏物語』の文献学的な研究で知られる池田亀鑑は、『宮廷女流日記文学』においては、主情的な評論を試みており、両者は鮮やかな対照をなしている。彼のこのような二面性は、個人的な資質による面もあったが、さらに、池田が人間形成をした大正期に哲学・芸術・文学・社会運動などあらゆる領域を席巻した「生命主義」とも呼ばれる大きな潮流の影響を考える必要がある。池田という研究者は、大正期という時代の新しい流れに反応し、この時代に文学研究をめぐって浮上してきた問題を引き受けて、一生を送ったといえるのである。

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© 2012 日本文学協会
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