鳴門教育大学
2014 年 63 巻 6 号 p. 11-21
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『栄花物語』「異本系統」の富岡本において、顕著な増補がなされる巻二十七~三十を分析すると、他系統の本文に比して父・藤原道長の後継者としての頼通像が殊に強調される傾向が指摘できる。それは、後朱雀天皇后・禎子に対する頼通の懇切な後見のさまを描き出す補入とも読み取れ、これによって富岡本の改修時期・背景が推測され得るのである。固定された本文の受容にのみ留まらない、享受者による改修の動きは、歴史物語の再創造とも言える文学的営為として捉えるべきであることを提示する。
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