2017 年 66 巻 4 号 p. 2-11
「物語音読論」以降、『源氏物語』では作中の女房(たち)の見聞にもとづく口頭の「語り」が筆記・編纂されている、という一種の物語生成の機構が読みとられてきた。しかし、それは「蓬生」巻のように典型的なケースにもとづく推論であった、たとえばその次の巻、「関屋」に注目してみると、「語りnarrative」に関しては「蓬生」と対照的な性格が際だっている。さらに「関屋」巻の巻末の言葉にも注意して、『源氏物語』のつくられた「語り」と、その実験的な叙述の一端を明らかにする。