本稿では,学習者90名の接続辞表現の使用を分析し,人間の思考傾向,および,言語処理能力の発達という認知的な側面から第二言語の発達過程について考察を試みた。
言語処理可能性理論(Pienemann 1998)では,語→句→文→複文の順に言語処理能力が発達すると説く。本稿では,この理論をもとに,南(1993)の分類による従属節A類,B類,C類は,その構文的特徴から,A類(句処理)→C類(文処理)→B類(複文処理)の順に発達すると予測をたてて分析を行った。
その結果,日本語能力が上がるとともに,産出の際の思考的負担の少ない接続辞表現から使用が広がっていくという傾向が見られた。具体的には,事実的な順接から逆接へと広がり,そのあと仮定的な順接から逆接へと広がる傾向が見られた。また,正用率はA類→C類→B類の順に90%を超えることが確認され,予測した順に言語処理能力が発達することが示唆された。