2008 年 138 巻 p. 43-52
本稿では,前半でドイツにおける移民の受け入れの歴史を概観し,移民に対する言語教育の変遷について論じる。後半では,第2言語としてのドイツ語教育の現状を顕著に示す3つのトピックを扱う。まず,近年注目を集めているヘッセン州のケースを例に,就学前の移民の子どもに対するドイツ語教育について論じる。次に,ニーダーザクセン州を事例として,小中学校で行われているドイツ語の学習支援についての方策をいくつか取り上げる。最後に,成人に対するドイツ語教育の例として,2005年に発効した「移民法」を受けて実施されている移民に対する統合コースを扱う。このコースはドイツ語教育600時間,ドイツ事情を扱うオリエンテーションコース45時間からなっている。ドイツでは,外国人の統合には連邦や州だけではなく,外国人委任官や宗教団体など多様なアクターがかかわるべきであることが,「移民法」にも謳われている。