日本語教育
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調査報告
実態調査からみた「義務の表現」のバリエーションとその出現傾向
小西 円
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2008 年 138 巻 p. 73-82

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抄録

 近年,コミュニケーション活動に応じた文法記述や日本語の使用実態調査が求められている。本稿はそのような観点から文法記述を行う一例として「なければならない」に代表される義務の表現を取り上げ,コーパスを用いてそのバリエーションの出現傾向を調査した。また,「話しことば/書きことば」というラベルの暖昧さを指摘し,調査データとなるコーパスを「媒体」「場」「聞き手との相互作用」の3つの言語外的要素から規定し,具体的な出現場面から義務の表現の各バリエーションの出現傾向を記述した。調査結果を簡単にまとめると,音声言語のコーパスでは「なきゃ+いけない」という形式が高い確率で出現し,文字言語では「なければ+ならない」という形式が義務の表現としてほぼ固定的に使用される。「ないと」を用いた義務の表現は,特に音声言語のコーパスにおいて,日本語能力試験出題基準に示されている「なくては+いけない」という形式よりも多く出現する。

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© 2008 公益社団法人 日本語教育学会
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