2012 年 153 巻 p. 96-110
サービス・ラーニング(以下SL)とは,学習者が明確な学習目標を持って地域社会のサービス活動に従事し,知識を体験に生かすとともに,その体験を通じてさらに生きた知識を学ぶ(ラーニング)体験学習の一手法であり,近年日本でも大学教育に取り入れられ始めている。本稿は,SLの要素を取り入れ,高齢者施設で「話し相手ボランティア」を行った上級日本語コースの実践報告であり,コースの概要を紹介するとともに,学習者による授業評価アンケート,個別インタビュー,学習者が書いたジャーナルおよびレポートの分析を行った。その結果学習者は日本語力,特に書く力が伸びたと感じていたほか,人生観,価値観への影響があったと考えていることがわかった。学習者がSLから得たものとしては,(1)人生の先輩から与えられる気づきや励まし,(2)人の役に立つことの喜び,達成感(3)人間に対する洞察と共感,(4)知識の個人化,(5)先入観からの脱却,が認められた。