日本語教育
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寄稿論文
ナラティヴとの融合が示すエスノグラフィーの展開
八木 真奈美
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2015 年 162 巻 p. 50-65

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抄録

 近年,日本語教育研究においても質的研究の重要性は高まっている。本稿の目的は,ナラティヴという視座から質的研究方法の一つとしてのエスノグラフィーの新たな展開を示すことである。それに先立ってまず,ここで扱うエスノグラフィーは,単なる調査や分析の手順を指すだけではなく,認識論的な世界の見方に関わるものだということを述べる。次に,エスノグラフィーの分析プロセスを示した後,ナラティヴとの融合による新たなエスノグラフィーの展開を,筆者の研究を再考する形で示す。結論として,質的研究の調査や分析の方法は,自らの依って立つ解釈の枠組みを明示し,対象となる人や集団の理解を目指した上で,何を明らかにしたいのかによって多元的に選択し,組み合わせていくことができると考える。それにより,人間と言葉の複雑な関係をより深く捉えられる可能性が生まれることを主張したい。最後に,日本語教育における質的研究の意義について述べる。

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© 2015 公益社団法人 日本語教育学会
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