2019 年 172 巻 p. 3-17
本稿では,地域日本語教育のあり方と,そこに関わる人材に必要とされる資質・能力,及びそれら人材の育成内容と方法について検討した。地域日本語教育は社会参加のための言語保障と地域社会の変革を目指して実施される相互学習とを包含したシステムとして位置づけられ,そのシステムを機能させるための専門職を配置し体制を整備することが不可欠である。地域日本語教育に関わる人材は専門職としてのシステム・コーディネーター,地域日本語コーディネーター,地域日本語教育専門家の3者と,日本語ボランティアとに分けられ,それぞれの役割に応じて求められる資質・能力と育成内容は異なるが,育成方法としては現場主義,振り返り,共有と協働,継続性といった点が共通して重視される。また,地域日本語教育において指摘される参加者間の非対称性の問題を人材育成の観点から打開する視点として,外国人等人材の育成と,実践の振り返りの徹底が挙げられる。