本稿では係り結びと不定構文の相補性について論じる。日本語の歴史においては、カによる係り結びが衰退した後に、カによる間接疑問・選言・不定などの不定構文が現れたが、このような係り結びと不定構文の相補性が、現在も係り結びが残る南琉球宮古語においても見られるか調査を行った。その結果、疑問の助詞gaによる係り結びが使われる中南部諸方言ではgaによって不定構文が形成できず、疑問のgaによる係り結びが衰退した北部の諸方言ではgaによる間接疑問や選言が見られた。このような係り結びと不定構文の相補的な分布は、係り結びの主文生起性によって説明できる。つまり、主文に生起するという係り結びの性質が、不定構文における名詞句内や従属節内でのその助詞の使用に影響しているのである。