日本語の研究
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江戸期蘭語学における日本語の格理解
──『六格前篇』と『和蘭語法解』を比較して──
服部 紀子
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2017 年 13 巻 1 号 p. 18-34

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抄録

日本語文法の研究史上、西洋文典の影響による格は江戸期の鶴峯戊申『語学新書』以降複数の文典に見られる。本稿はこの種の文典の前提となる蘭文典、吉雄俊蔵『六格前篇』(1814)と藤林普山『和蘭語法解』(1812)を取り上げ、日本語の格理解を比較する。両書は、格機能の捉え方に共通点があるが、格標示形式の扱いにそれぞれの特性が現れている。また、『六格前篇』は非表出の格標示形式を捉える際に本居宣長の「徒」を念頭に置いていることも確認した。両書の格理解を明示することで、国学からの影響を浮き彫りにし、日本語の格研究が蘭語学から鶴峯へとつながる過程を示すと共に、蘭学者による日本語のテニヲハ理解の一端を国語学史上に位置づけることができた。

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