日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
Print ISSN : 1349-5119
13 巻, 1 号
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  • ──その原因について考える──
    松森 晶子
    2017 年13 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー

    首里方言の「iːʧi息, uːʃi臼, wuːki桶」に代表されるように, 北琉球(奄美大島から沖縄本島まで)の各地には, 一部の2音節名詞の語頭音節の母音が長くなっている体系がある。この長音節の出現にアクセントが関与していることは, 服部(1932)によってはじめて指摘された。さらに服部(1979)は, その長音節が日本祖語(本稿の日琉祖語)の段階から存在していたことを論じた。本稿は, この2音節名詞の語頭に見られる長音節は, (日琉祖語ではなく)北琉球祖語の段階であらたに生じた, という仮説を提示する。本稿では, この長音節発生の原因は北琉球祖語のアクセント体系に求められるとし, これは(1)同じ体系内の単独形が似た他の型との区別のため, そして(2)体系内の同系列の3音節名詞と同じ型を内部に実現させるため, という2つの理由により生じた, という仮説を提示する。

  • ──『六格前篇』と『和蘭語法解』を比較して──
    服部 紀子
    2017 年13 巻1 号 p. 18-34
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー

    日本語文法の研究史上、西洋文典の影響による格は江戸期の鶴峯戊申『語学新書』以降複数の文典に見られる。本稿はこの種の文典の前提となる蘭文典、吉雄俊蔵『六格前篇』(1814)と藤林普山『和蘭語法解』(1812)を取り上げ、日本語の格理解を比較する。両書は、格機能の捉え方に共通点があるが、格標示形式の扱いにそれぞれの特性が現れている。また、『六格前篇』は非表出の格標示形式を捉える際に本居宣長の「徒」を念頭に置いていることも確認した。両書の格理解を明示することで、国学からの影響を浮き彫りにし、日本語の格研究が蘭語学から鶴峯へとつながる過程を示すと共に、蘭学者による日本語のテニヲハ理解の一端を国語学史上に位置づけることができた。

〔研究ノート〕
  • 堀川 宗一郎
    2017 年13 巻1 号 p. 42-35
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル フリー

    これまで、促音表記には「ん」と「つ」の両表記が混在し、次第に撥音は「ん」、促音は「つ」へと表記が固定したと指摘されてきた。しかし、鎌倉遺文における促音表記を見ると「ん」と「つ」とに明確に弁別をするには字形のみでは困難であった。

    本調査では、鎌倉遺文を調査対象とし字形のみならず促音表記の前後に接続する仮名との連綿状況にも着目し、鎌倉遺文内における促音表記は「ん」あるいはそこから派生したものによって表記されていた蓋然性が高いことを明らかにする。そして、翻字にあたっては本調査方法を含めた複合的な観点から為される必要があり、これまで翻字されてきたものにおいて再度検証する必要性を指摘する。

〔書評〕
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