日本語の研究
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福井県北潟方言の後部3拍複合名詞のアクセント
──「式保存」が成り立たない共時的・通時的背景──
松倉 昂平
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2019 年 15 巻 2 号 p. 35-51

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抄録

九州西南部の二型アクセントにおいては,前部要素の型が複合語全体の型に引き継がれるいわゆる「式保存」の法則がごく規則的に成り立つことが知られる。しかし福井県北潟(きたがた)方言の三型アクセントにおいては,前部要素が複合語の型を決定する全般的傾向は認められるものの,式保存に沿わない複合語の例が多い。本稿では,1拍+3拍及び2拍+3拍複合名詞のアクセントを分析対象として,北潟方言で一貫した式保存が成り立たない共時的・通時的背景を考察する。通時的考察では,「C型前部要素を持つ複合語が(式保存に反して)B型に転じる」傾向が見られることに着目し,その傾向が室町期の中央語に生じたアクセント変化(いわゆる「体系変化」)と同様の変化の結果を反映する現象であることを示す。

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© 2019 日本語学会
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