書き言葉の文末に現れる「てみせた。」は,「子供たちにバイオリンを弾いてみせた。」,「驚いてみせた。」,「試験に合格してみせた。」など,様々な意味を表す。本稿では,このような「てみせた。」の意味機能,および多様な意味を表す仕組みについて論じる。まず,「てみせた。」が「何を見せたか」について,前接動詞の種類に着目し,5つ(「モノ」,「実技」,「身振り・態度」,「作り様態」,「結果」)の区分を示す。また,「てみせた。」には,観察者側が受信して述べる用法があり,その解釈には主語の人称を区別する必要があること,観察者が他者の様態や事態の結果を感じ取って述べる三人称主語文は,観察者の評価を含意することを指摘する。そして,「てみせた。」の5つの区分には,提示内容の抽象化とともに,本動詞「見せる」の意味が薄れていく現象,意味の抽象化が認められることを示す。