日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
Print ISSN : 1349-5119
16 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
小特集:『日本語学大辞典』
 
  • 張 明
    2020 年 16 巻 1 号 p. 51-67
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

    本稿は不定機能を持つ前接要素「某(ボウ)」を考察対象とし,類義関係にある「ある」と比較しながら,「某」が独自に持つ統語的特徴,「某」の不定機能がどこから生じるのかという意味論的位置付け,「某」の使用によってもたらされた語用論的効果といった課題を詳しく検討するものである。「某」の指示対象は固有名を持ち,「某」とはその固有名の部分を何らかの理由によって明かさないという表現である。「某」の不定機能は固有名の部分を明かさないことから生じるものであり,語として本来的に不定機能を持つものではない。また,「某」が独自に持つ統語的特徴として,同じ形式が再度出現できること,主題に現れること,「ある」と共起することが挙げられる。これらの統語的特徴は「某」の意味論的位置付けの根拠にもなる。最後に,「某」の使用によってどのような語用論的効果が生じるのかについて検討する。

  • ──書き言葉の「てみせた。」の意味機能に注目して──
    井上 直美
    2020 年 16 巻 1 号 p. 68-84
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

    書き言葉の文末に現れる「てみせた。」は,「子供たちにバイオリンを弾いてみせた。」,「驚いてみせた。」,「試験に合格してみせた。」など,様々な意味を表す。本稿では,このような「てみせた。」の意味機能,および多様な意味を表す仕組みについて論じる。まず,「てみせた。」が「何を見せたか」について,前接動詞の種類に着目し,5つ(「モノ」,「実技」,「身振り・態度」,「作り様態」,「結果」)の区分を示す。また,「てみせた。」には,観察者側が受信して述べる用法があり,その解釈には主語の人称を区別する必要があること,観察者が他者の様態や事態の結果を感じ取って述べる三人称主語文は,観察者の評価を含意することを指摘する。そして,「てみせた。」の5つの区分には,提示内容の抽象化とともに,本動詞「見せる」の意味が薄れていく現象,意味の抽象化が認められることを示す。

〔書評〕
日本語学会2019年度秋季大会シンポジウム報告
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