2023 年 19 巻 2 号 p. 53-69
本稿では日本語研究が社会の動きと関わる可能性の1例として「やさしい日本語」という取り組みについて紹介した。今後日本が直面する人口減少社会において外国人の適切な受け入れは不可欠であり、「やさしい日本語」はそのための言語政策としての側面を持つ。マジョリティである日本語母語話者にとって「やさしい日本語」が持つ意味として、日本語でのコミュニケーション能力の向上を挙げた。また、専門家から非専門家への情報提供のあり方の考察を通して「日本語母語話者にとっての「やさしい日本語」」であるプレイン・ジャパニーズ(PJ)の概念を提示し、PJが「日本語の国際化」だけでなく「日本社会の国際化」にも貢献しうることを論じた。最後に、こうした観点から日本語研究者が社会の動きと関わる際に参考にすべき著作として遠藤・渡辺(2021)と林(2013)を挙げた。