日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
Print ISSN : 1349-5119
 
ゾの係り結びの焦点化機能の変化
──中世の語順変更を中心に──
小原 真佳
著者情報
キーワード: 係助詞, , 係り結び, 焦点, 語順
ジャーナル フリー

2024 年 20 巻 2 号 p. 122-139

詳細
抄録

本稿では,中古と中世のゾの係り結びを比較し,①中世ではゾが格成分(時・場所・主体)に承接する割合が減少する,②中古・中世共にゾは述語直前に生起することが多く,その傾向が時代が下るにつれて強くなる,③中古以前には行われていた語順の変更が中世では行われにくくなるという3点の変化を示した。

さらに,焦点となる要素が代替集合(alternative set)を想定するかという点から,焦点を2つに区分し,上記の3つの変化が,ゾの係り結びの焦点化機能の変化によるものであることを指摘した。中世のゾの係り結びの中心的な用法は,中古以前に多く見られた語順変更を伴うものから離れ,述語の直前に現れる,代替集合を想定しない焦点にゾを付加するものと,文中の位置に関係なく,代替集合を想定する焦点にゾを付加するものへと移行したと考えられる。

著者関連情報
© 2024 日本語学会
前の記事 次の記事
feedback
Top