2025 年 24 巻 3 号 p. 37-46
児童館は児童福祉法40条に基づく児童福祉施設であり、運営にあたっては、児童館のない地域に出向いて遊び等の体験機会を提供する、移動児童館活動を行うことが児童館ガイドラインで定められている。先行研究では、移動児童館活動は児童館外でニーズを把握し、支援につなげる予防的効果が期待できるとされているが、実態は十分に把握されていない。そこで本研究では、移動児童館活動の実施内容を明らかにした上で、遊び等の提供を中心とした活動が地域ニーズの把握や充足に向けた取り組みへと発展する過程を分析し、地域における健全育成の環境づくりに対する移動児童館活動の新たな可能性を考察した。
全国の児童館を対象とした調査結果からは、移動児童館活動において子育て支援活動や運動遊びの提供等が行われている実態が把握された。また、地域ニーズの充足に向けた取り組みに関しては、個別支援や社会資源を活用した支援を提供していることが明らかになった。さらに、これらの活動の展開過程では、多くの地域住民が関わり、地域における多様な組織の連携が促進されることが示された。そのため、移動児童館活動は児童の健全育成に関する地域住民の意識向上に結び付き、住民同士が主体的に地域ニーズの充足に向けて取り組む過程にもつながることが明らかとなった。また、これらの過程をとおして移動児童館活動は、地域住民による主体的な活動へと発展する可能性があることが示唆された。