日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
プラズマ溶射法により作成した固定酸化物型燃料電池用Ca2+置換ランタンクロマイト膜セパレーターのキャラクタリゼーション
岩田 友夫
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2001 年 2001 巻 5 号 p. 307-315

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抄録
平板型支持膜方式固体酸化物型燃料電池の複合セラミックスセパレーターを,La(Sr)MnO3基板とそれにプラズマ溶射されるLa(Ca)CrO3溶射膜で形成した.La(Ca)CrO3の組成がLa0.7Ca0.35Cr0.95O3とLa0.8Ca0.22Cr0.98O3の溶射膜のガス透過率は10−7–10−6 cm4 g−1 s−1であり,SEM観察で溶射膜表面にはひび割れが観察された.しかしこれらの溶射膜を1473 Kで大気中2時間焼成したところ,ひび割れは消失してち密質の焼結体が観察され,ガス透過率は1 × 10−8 cm4 g−1 s−1以下に向上した.また組成によらず溶射材粉末や溶射膜にはXRDでCaCrO4やLa2CrO6の第二相が観察され,焼結膜ではそれらが消失してLa2O3とCaOが観察された.またLa0.7Ca0.35Cr0.95O3では焼結膜の格子定数は溶射膜のものより大きく,La0.8Ca0.22Cr0.98O3ではほとんど変わらなかった.さらにWDX-SEMによる焼結膜断面の組成分析から,特にLa0.7Ca0.35Cr0.95O3焼結膜では表面にCaOの生成が観察された.このようにCa2+をドープしたLa(Ca)CrO3溶射膜は溶射膜の熱処理過程で第二相成分が融解してLa(Ca)CrO3の焼結が促進され,溶射膜はち密化して,CaO等は第二相成分の分解や溶射膜の焼結過程で生成されるものと推察された.これらにより固体酸化物型燃料電池のセパレーター材には電子伝導度に劣るCaOの生成が少ないLa0.8Ca0.22Cr0.98O3を用いるのがよいことがわかった.
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