日本皮膚科学会雑誌
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ハンセン病の治療と境界反応についての検討
並里 まさ子寺井 奥子小川 秀興
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2000 年 110 巻 13 号 p. 2127-

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抄録
ハンセン病患者の治療経過中にみられた境界反応(BR)5例について,それぞれの重症度と持続期間を,治療内容と比較検討した.LL型(subpolar type:LLs)2症例(L①,L②)はともに初発例で,境界群(B群)の3症例(B①,B②,B③)はともに再発例であった.早期診断とともに,WHOの推奨する多剤併用療法の多菌型用regimen(MDT/MB;1982年)を投与したL①では,治療開始後早期にBRが出現したが,MDT/MB(1982年)を約2年間継続後他剤に変えて経過観察中にも,運動神経麻痺の形で2回目のBRが出現した.一方,不適切な初期治療(DDS50mg/日)が長期継続したL②では,この間にENL,虹彩炎などのⅡ型らい反応が出没し,その後より有効と考えられる治療に変更後,BRが2回出現した.いずれも2回目のBRを経験後,皮膚塗抹検査での菌指数は著明に低下した.B①は,再発初期よりMDT/MB(1982年;変法)が投与されたが,B②は,不適切治療(DDS25mg/日)が6年間続いた後MDT/MB(1982年)に変更された.BRの持続期間は,B①の方がB②よりも著しく短かった.B③は,再発時の菌指数が高値で,その後複数の薬剤が少量ずつ単剤で2年9ヵ月投与された後,より有効な治療に変更された.この症例は,数年間重度のBRが続き,初期にはENLも混在した.我々は,多発地域における疫学的な群現象として追跡するフィールド調査とは異なる視点より,上記5例を詳細に観察した.その結果,BRについて以下の傾向がみられた.LLsでのBRは,効果的な治療の後に出現し,十分な殺菌力のない治療が続いた場合には,その間Ⅱ型らい反応に関連する組織障害が起きうる.B群では,早期の有効な治療が,BRの予後にとって特に重要である.また治療前の菌指数が高値のLLsで,MDT/MB(1982年)終了後も菌指数の低下が不十分な場合,さらに十分な期間の治療・観察が望まれる.今後さらに多症例で検討し,ハンセン病のより確実な治療について考えていきたい.
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© 2000 日本皮膚科学会
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