工業化学雑誌
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結晶性ポリ酸無水物の構造と性質
依田 直也
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1962 年 65 巻 5 号 p. 671-676

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抄録

1個のモノマー単位中に2個の芳香環を含む芳香族ポリ酸無水物の構造と性質を比較検討する目的で,エチレングリコール-1,2-(4-カルボキシフェニルエーテル)を合成し,ここに得られたジカルボン酸を無水酢酸で処理し,得られるジアセテートを減圧加熱下に縮重合を行なうことによってポリ酸無水物のポリマーブロックを作成した。得られたポリマーを紡糸温度252~257℃,巻取速度21m/minの条件でモノフィラメントに溶解紡糸を行ない,ポリ酸無水物未延伸糸を得た。これを100±2℃の条件で延伸(3.0倍)を行ない,さらに熱処理を経て延伸熱処理糸を得た。このポリ酸無水物繊維のX線回折ならびに赤外スペクトルのデータから配向性が良好であることを確認し,さらに延伸,熱処理によってポリマーの結晶性が増加することを認めた。また2,2-ビス-(4-カルボキシフェニル)プロパンの縮重合によって得られたポリ酸無水物のX線回折ならびに赤外スペクトルのデータに基づいて同一骨格構造を有する2,2-ビス-(4-オキシフェニル)プロパンのポリカーボネートとの立体配置の構造を比較検討した。
ここに得られた芳香族ポリ酸無水物は熱ならびに加水分解に対してきわめて良好な安定性を示すことを認め,吸湿性を検討し,ポリマーの物性におよぼす分子の構造の影響を考察した。

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