工業化学雑誌
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ポリアセチレンの常磁性と電導性
籏野 昌弘神原 周岡本 重晴
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1962 年 65 巻 5 号 p. 716-719

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抄録

チーグラー型の触媒系を用いてアセチレンを重合し,非晶性および結晶性の重合体をえた。この重合体はトランスートランス型共役二重結合からなる規則的構造をもち,長い共役鎖を有するので,安定な不対電子をもつものと期待した。また,共役鎖に沿って電子伝導が行なわれると考え,著者らはこの重合体の常磁性と電気伝導性の測定を行なった。常磁性共鳴吸収の観測によって,これらの重合体のいずれにも相当程度の濃度の不対電子が存在することを見出した。たとえば,非晶性のポリアセチレンには1018spins/g,結晶性のポリアセチレンには1019spins/g,酸化したポリアセチレンには1017spins/gの不対電子が存在することを見出した。これらの常磁性共鳴吸収スペクトルは,いずれも8~10ガウスのΔHmslをもつ狭いシングレットで,波形はいわゆるローレンツ型であった。また,共鳴条件のg因子は2.0028であった。従って,ポリアセチレン中に存在する不対電子は長い共鳴共役系によって安定化された非局在性の不対電子であろうと推論された。また,各試料の電気伝導度の温度依存性は本質的半導体の特性を示す式に従うことも明らかにした。

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