黒鉛中における物質の移動(拡散・透過)についての知見を得る目的で,各種黒鉛ブロックの臭素吸収速度を,硬質ガラス製真空装置と石英スプリング・バランスを用いて測定した。
黒鉛材料の臭素吸収速度, およびその飽和吸収量は, 黒鉛化度に強く依存するが, 0℃で飽和臭素ガスと反応させた場合,飽和組成は原料が天然黒鉛のものはC8Br,人造黒鉛ではC9BrないしC10Brに相当する。吸収速度は,反応率を時間の平方根に対してプロットすると,黒鉛化度の大きい試料ではいずれも特徴的なS字形の曲線となる。これは,臭素は黒鉛の構造中に固溶し,その一部が可逆的に反応生成物になる,とするモデルに対応し,圧力-吸収量曲線その他の結果もこれを支持する。以上より,この反応が臭素分子の黒鉛構造中の移動がかなり容易な一種の固溶体の生成であることが推論される。
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