工業化学雑誌
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金属塩触媒による炭化水素の自動酸化における有機酸溶媒の影響
神谷 佳男
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1965 年 68 巻 10 号 p. 1877-1880

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抄録

酢酸からミリスチン酸にいたる多種類の脂肪族酸溶媒中でテトラリンをコバルト触媒を用いて液相空気酸化し,連鎖開始(k1),進行(k3)ならびに停止(k6)などの反応速度定数を比較した。開始反応,すなわちヒドロペルオキシドの分解速度はコバルトについて2 次, ヒドロペルオキシドについて1 次であった。k 1はペラルゴン酸溶媒中では酢酸中の10倍であった。dROOH/dt=k1(Co)2(ROOH)。しかし, k 1 は酸濃度の2 乗に逆比例し, k1=k″/(Acid)2におけるk″は酸の種類に関係なくほぼ一定であった。分解速度は酸の種類ではなくモル濃度によって変化する。触媒濃度と酸化反応速度の関係を求めたところ,高濃度における限界反応速度は,炭素数の多い,従って誘電定数(D)の小さい脂肪酸ほど低い値を示したが,低濃度ではk1が大きく,炭素数の多い脂肪酸の方が高い値を示した。log(k3/k61/2)と溶媒の(D-1)/(2D+ 1 ) の相関は極めて良好であった。実験的に求めたk1とk3/k61/2から計算した低触媒濃度における反応速度〓は実験値と良く一致した。誘電定数の大きいモノクロル酢酸では限界反応速度が大であったが,触媒が徐々に不活性化された。酢酸溶媒中の反応について種々の有機酸の添加効果を検討したが,シュウ酸は等モルのコバルトを不活性化する作用を示した。

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