工業化学雑誌
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β-プロピオラクトンの重合反応と生成物の構造
浅原 照三片山 志富
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1966 年 69 巻 11 号 p. 2179-2188

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抄録

β-プロピオラクトンの単独開環重合を酸,フリーデル-クラフッ触媒,アルカリ触媒,塩触媒を用いた塊状重合,種々の溶媒を用いた溶液重合によって行ない, その反応特性および生成ポリマー( PβPL ) の溝造を検討した。
酸,フリーデル-クラフツ触媒では,触媒の種類によって爆発的反応とゆるやかな反応を起こす境界温度(「臨界温度」と命名)が存在し,ともに生成物は結晶性ポリエステルである。
アルカリ,あるいは塩触媒では,触媒の種類,触媒濃度,反応温度に関係して,「臨界濃度」,「臨界温度」が定まり,この値を境界とする条件で,爆発的反応によっては無定形PβPLを,ゆるやかな反応では結晶性ポリエステルを生じる。
無定形PβPLは結晶性ポリエステルが部分的にエノール化し,さらに,エノール化によって生じた2重結合が部分的に架橋重合した一連の構造のポリマーであると思われる。結晶性PβPLは無定形PβPLに転移可能であるが,その逆は不可能である。
PβPLの繊維あるいは結晶構造の安定性はヘリカル構造>21らせん構造>ジグザグ構造の順になっていると考えられる。
また,酸,フリーデル-クラフツ触媒によるPβPLの分子鎖末端に触媒断片は付加していないのに対し,塩,アルカリ触媒では触媒付加があり,これらの触媒作用機構の差がβ-プロピオラクトンの重合性,生成βPLの物性,構造のいちじるしい差異の原因になっているものと思われる。これらを詳細に検討して種々の知見を得た。

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