高温X線回折と熱重量変化の測定を共用できる装置を試作した。この装置は炉の中で試料を固定したり,浮動状態にしたりすることによって,X線回折と熱重量変化の測定を交互に行なう方法をとっている。試料の固定と浮動は,炉の中で試料holderを約3mm上下させるだけでできるよう,試料holderと炉の構造が工夫されている。
炉はBeO製の炉材にPtRh20電熱線を巻きつけたもので,試料を空気中で1200℃以上の高温に加熱することができる。試料はPt製の試料holderに充填され,直示天秤によって秤量される。
試料を固定したり浮動状態にすることを繰り返した場合の,固定位置の再現精度を,Si粉末試料を用いてX線的に測定した結果±0.02°(2θ)以内の再現誤差であることが確認された。また,試料holder付近の温度分布については,ほぼ±0.5°/mm程度の傾斜であり,対流が秤量値に及ぼす影響は±0.3mg以内(1000℃までの昇温で)である。
この装置を用いた測定例として,CaCO3(Calcite)を加熱したときのX線回折と,熱重量変化の測定結果が挙げられており,CaCO3(Calcite)→CaOの変化過程が示されている。
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