工業化学雑誌
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双子型熱量計による液相反応の動力学的研究-実験装置の試作と無水酢酸の水和反応の解析-
高島 巌米山 勝久渡辺 国雄
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1966 年 69 巻 9 号 p. 1672-1677

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抄録

複雑な化学反応の厳密な動力学的検討は容易に行なうことができない。そこで実際の工業的反応装置の設計の立場で必要となる反応熱と反応速度論の見掛けの値を双子型熱量計により測定し, その実用性を検討した。
実験装置は双子型熱量計でそのおのおのは約600mlのガラス製2重槽にカキマゼ機, サーミスター, マンガニン線ヒーターおよび試料だめを有する。各熱量計の2重壁の間の空隙には伝熱抵抗を調節するために水を注入してある。各サーミスターはブリッジ回路の2辺に入れ, その温度差を連続的に記録した。
この熱量計は有効熱容量で1.25%, 伝熱抵抗の逆数で2.09%の標準偏差を持っている。精密な反応速度の測定には, その反応の活性化エネルギーの値にもよるが, 大概の場合に反応による温度上昇は1℃程度以下におさえることが必要である。
この装置を用い, 無水酢酸の水和反応について反応熱と反応速度に関する実験を行なった。反応熱は無限希釈度に外挿した値としてQ∞=16.1kcal/mol, 反応は実験した濃度範囲では1次とみなされ, その速度定数は, k=(40.0×10-4)exp(-11.64/RT)sec-1を得た。これらの値は混合熱や混合速度も含まれたもので見掛けの値である。

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