工業化学雑誌
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粘土鉱物の脱水過程のエネルギー変化
須藤 俊男下田 右西垣 茂青木 正治
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1966 年 69 巻 9 号 p. 1681-1685

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抄録

示差熱天秤と熱重量変化率測定装置と比熱・示差熱測定装置(断熱式熱量計)を用いて,粘土鉱物の脱水過程に見られる活性化エネルギー,またエネルギー変化(熱量変化)を求めた。
熱量変化は,同時または相前後して記録された熱重量変化曲線より求めた重量減(ここで取り扱かった試料ではいずれも脱水量と見ることができる)を基準とした値で比較した。上記の測定値に影響する因子は多いが,ここに得られたデータでは水分子または(OH)に結合するイオンの種類,濃度の影響以外のものについては読み取ることができなかった。取り扱った試料は,蛇紋石鉱物,モンモリロナイト,緑泥石,混合層粘土鉱物(成分層はモンモリロナイト,雲母,dioctahedral型の緑泥石)である。蛇紋石鉱物の活性化エネルギーは,約70kcal/molであり,エネルギー変化は17kcal/H2Omolである。他の鉱物については,ケイ酸塩層の(OH)水の脱水について,モンモリロナイトでは,9.8kcal/H2Omol,混合層粘土鉱物(雲母-モンモリロナイト,およびdioctahedral緑泥石-モンモリロナイト)では,12.4~13.4kcal/H2Omol。ケイ酸塩層の脱水については,モンモリロナイトで,17.7kcal/H2Omol,混合層粘土鉱物(雲母-モンモリロナイト)で,16.8~17.5kcal/H2Omol,緑泥石で19.3kcal/H2Omolである。水酸基層の(OH)脱水については,緑泥石で19.3kcal/H2Omolである。なお比較のため,石英のα⇔βの転移熱を求め,140cal/mol(ピークの温度573±1℃)を得た。測定値の再現性はいずれも±5%の程度である。
粘土鉱物研究には古くから,示差熱分析が定性判別の目的で広く用いられている。この研究は,できるだけ定量的論議が行なえるような熱データを得る目的で行なったものである。機械の細部の仕組についての検討,ならびに厳密な外気条件の制御のもとでの実験は将来の問題として残る。

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