1966 年 69 巻 9 号 p. 1686-1689
粘土鉱物の吸着水,層間水および構造水の大気圧下における脱水現象については数多くの報告がある。また,加圧下あるいは真空中の脱水についても数種の報告があるが,大気圧より真空まで種々の窒素ガス減圧下において,示差熱分析法により研究したものはない。そこで著者らは試料として3層構造をもつモンモリロナイト,2層構造のカオリナイトおよびハロイサイトを用い1~760mmHgの種々の窒素ガス圧下において,DTAとTGを行ない,粘土鉱物の保有する水の安定性について検討した。得られた結果よりVan't Hoffプロットを行ないClapeyron-Clausius式を用いて脱水熱を求めた。
その結果,各粘土鉱物の吸着水,層間水,および構造水の脱水温度は窒素圧力の減少と共にいずれも低温側に移行し,その低下割合はモンモリロナイトよりカオリナイトおよびハロイサイトの方が大きかった。吸着水および層間水は減圧にしただけで室温でも脱水してゆくが,構造水は圧を減じただけでは脱水は容易に始まらず,ある温度以上で急激に脱水することを示した。実験結果より計算したモンモリロナイト,カオリナイトおよびハロイサイトの構造水脱水熱はそれぞれ415,186,162cal/gとなり,3層構造内のOHの方が結晶表面に出ているOHより脱水されにくく安定であることを示した。
この記事は最新の被引用情報を取得できません。