1966 年 69 巻 9 号 p. 1724-1727
銅-,ニッケルフタロシアニンは一般に常温で不安定型であるα型と,安定型であるβ型の2種の同質異晶型が存在する。これらの結晶構造の違いはX線回折,電子顕微鏡などで詳細に研究されているが,その表面構造の差異,すなわち表面の物理化学的性質の差に関してはまったく報告がない。α→β型の転移法にはいろいろあるが,本実験では特に溶媒による転移を取り上げ,有機溶媒によってα型の結晶をβ型に転移成長させることにともなうその表面の性質の変化を調べた。また同時にフタロシアニンの中心金属が変化することによって,表面の性質がどのように変わるか,ということも調べた。このために比表面積の変化および10%エタノール水溶液に対する湿潤熱を測定し次の結果を得た。
銅-,ニッケルフタロシアニンとも,その単位面積当りの10%エタノール水溶液による湿潤熱はα型に比較してβ型の方が大きい。また銅フタロシアニンのα型とニッケルフタロシアニンのα型の10%エタノール水溶液による単位面積当りの湿潤熱を比較すると,ニッケルフタロシアニンの方が大きく,同様にβ型においてもニッケルフタロシアニンの方が大きい。
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