工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
トリクロルイソシアヌール酸の熱分解
浅岡 忠知島崎 長一郎久住 勝也坂東 裕好
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 69 巻 9 号 p. 1743-1749

詳細
抄録

トリクロルイソシアヌール酸の熱処理による性質の変化および熱分解機構を解明する目的で,熱分解過程を示差熱分析,熱天秤および赤外吸収スペクトルによって追求し,熱分解はイソシアヌール酸を経由してシアン酸になることを確認した。そして実験結果を説明するために,熱分解過程としてつぎの5段階を経るものと推定される。
(1)138℃での含有水分の蒸発,および含有水分との反応による塩素の離脱,(2)194℃のケト型からエノール型への転移,(3)235℃での融解,(4)245℃での塩素の離脱,(5)285℃でのシアン酸への分解である。熱分解の開始は主として(4)の段階より起こり,分解の仕方は(4)と(5)とは連続してほとんど同時に起こることがわかった。また分解の熱ピーク位置は塩素含量が多いほど低温側にずれる傾向にある。
示差熱分析および熱天秤で昇温速度を変化させることにより,分解の活性化エネルギーを算出し,前者では19.7kcal/molの値を得,後者では20.8kcal/molの値を得て,両者の値はきわめてよく一致した。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 社団法人 日本化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top