1939 年 60 巻 9 号 p. 805-812
1) 約2%の苛性ソーダを含む蟻酸ソーダを加熱し、次の轉移點を有する事を確認した.
212°C HCO2Na+NaOH=Na2CO3+H2 (1)
252°C蟻酸ソーダの融點
250°C<2HCO2Na=Na2C2O4+H2 (2)
(1) の反應温度は苛性ソーダの分量によつて異らず單なる異相反應なる事を確認した.
2) 苛性ソーダによる融點降下を測定した.
3) 苛性カリを含む蟻酸ソーダの分解も苛性ソーダの場合と同様な事を認め次式による事を發見した. 2HCO2Na+2KOH=K2CO3+Na2CO3+2H2
4) アルカリ土金属の酸化物又は水酸化物を含む蟻酸ソーダは300°C以下でも蓚酸鹽を生成することを發見した.此事實からBoswell並にDickson1)の苛性ソーダの觸媒能は其内部に融解せる水分に因るとの説は信じ難い.然し其活性は弱して300°C以上では消失し純鹽の場合と蓚酸鹽生成に著しい差を認めない.
5) 炭酸及び蓚酸ソーダの觸媒能の有無に就き從来屡論議が繰返されるから茲に檢討した.前者は400°Cでも蓚酸鹽量35%以上生成せしめないが,後者は純鹽の場合よりも稍低温で幾分の蓚酸鹽の増加を見る即ち蓚酸鹽は觸媒能を有する.
6) 急熱による蓚酸鹽増加は恐らく蓚酸鹽生成速度及び炭酸鹽生成速度に於て前者の温度係數が後者の夫よりも大なるに因る.
7) 蓚酸鹽製造の加熱條件は上述根據からしてi) 苛性ソーダ2%を有する蟻酸ソーダをii) 急熱して310°C以上に達せしめることである.
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