日本化學會誌
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海洋に關する化學的研究(第九報)
海水より由來する罐石の化學的組成I
石橋 雅義品川 睦明重松 恒信
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1941 年 62 巻 1 号 p. 44-51

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抄録

1. 軍艦蒸化器附着罐石2種(舞鶴),眞空式製鹽装置附着罐石4種(赤穗),天日製鹽々田罐石2種(朱安)なる3群の試料に就きて定性,定量分析を行つた.
2. 分析結果を見るに之等罐石は各々その成因により主成分Ca, Mg, SO4, CO3の含有量を異にする.
3. 之等3群の試料は各群の成因によつて土壌に影響を受くること大なる順位,即ち天日,眞空式製鹽,軍艦の順に微量成分たるFe, Al, Mn, Sio2, Ti, Pの如き親土元素の含有量に大體に於て大中小の差別がある.
4. 罐石の成分中には微量乍らその附着する器壁の材質が腐蝕混入してゐる.即ち本文中の分析例に見る如くFe, Cu, Snの如きはそれである.
5. ラヂウムの定量を行ひたる結果,罐石1g當り10-13g桁のラヂウムを含有することを知つた.
6. 金の定量を行ひたる結果,罐石1t當り0.04~0.20g程度の金を含有することを知つた.今海水1kgより罐石が約0.0001kg生ずると假定すれば罐石1tを得るに要する海水は約104tとなる.著者等は先に海水1t中に金を10-6桁含有することを知つたのであるから約104×10-6=10-2gの金が海水104t中に含有せらるることとなりて罐石分析結果と大約一致する.即ち海水中の金は殆ど罐石中に移行濃縮せらるることを發見實證し得たのである.

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