日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
DL-1,2-ジハロゲノプロパンの分子形
中村 清
著者情報
ジャーナル フリー

1957 年 78 巻 8 号 p. 1158-1164

詳細
抄録

DL-1,2-ジクロルプロパンおよびDL-1,2-ジクロムプロパンはともに理論的にトランス(t)*1,ゴーシュ(g)およびゴーシュダッシュ(g')の3種の分子形が化のである。主として赤外線吸収スペクトルの解析により液態,気態および固態の各態種における安定分子形を決定しようとし,ことにC-X伸縮振動領域(Xはハロゲン)に着目した。液態においてはC-X伸縮振動に帰属されるスペクトル線は前者で6本,後者で5本みいだされ,いずれもt,9および9'の3形とも安定形であることが結論される。さらに溶媒効果よりこれらのスペクトル線のt,gおよびgiへの帰属を行った。気態においてはC-X伸縮振動の強度より常温においては両者いずれもtが優位を占め,温度の上昇とともにgおよびg'の寄与が増加することが認められる。固態においては両者ともにtに帰属されるC-X伸縮振動スペクトル線のみ残り9および9'のスペクトル線は消失することよりtが安定形であることが結論される。これらの結果は液態および気態において9'の寄与を無視しtおよび9の2形のみ安定形とするo従来の推定とは異なりgtの寄与は無視できぬことを示すものである。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top