日本化學雜誌
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共有結合間不安定化エネルギー項の温度不依存性ならびに飽和炭化水素分子エネルギーの構造補正経験則
藤本 武彦新宮 春男
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1961 年 82 巻 8 号 p. 948-955

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抄録

第 2 報において報告した 0°K気体パラフィン炭化水素の分子エネルギー構造補正経験則を拡張じて,298.16°~ 1000°Kにおける同様の経験則成立の可能性を検討しだ結果,結合間不安定化パラメーターを温度不依存性のものとし,隣接分岐間の不安定化パラメーターのみその数値を一部修正することによって,異性化エネルギーの分岐形式配分項を各温度で決定すれば,精度よく経験則が成立することを確認した。すなわち,隣接分岐間の anti-1,4 位または syn-1,4 位に対する不安定化パラメーター R 及またはR4' のかわりに 298.16°K 以上では共通に R4s=0.1278kcal/mol {=(R4+R4')/2} を用いることとし,他の不安定化パラメーターは 0°K の場合に等しいとおけば,つぎに示す異性化エネルギー計算式をうる。
ΔHi(T°K 気体パラフィン)={ΣY(T°K)+ΣX(T°K)}iso-n+{ΣRn(n≥3)}iso-n kcal/mol ただし, T°K の Y(kcal/mol) および X(kcal/mol) はそれぞれ 298.16°:-4.48,-12.80; 400°:-4.46, -12.76; 500°:-4.36,-12.56; 600°:-4.21,-12.26; 800°:-3.99,-11.86; および 1000°:-39.2,-11.68 である。本経験則によるネオベンタンを除くオクタンまでの全分岐異姓体に対する異性化エネルギー計算値の平均誤差 (kca1/mo1) は ±0 .22 (298.16°K), ±0.22 (400°K), ±0.25 (500°K), ±0.30 (600°K), ±0.38 (800°K) および ±0.43(1000°K) である。さらに,不安定化エネルギー項がこのようにほとんど温度不依存性であることは別にジメチルシクロヘキサンの異性化エネルギーの考察によっても支持されることを明らかにした。

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