日本化學雜誌
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北上川の上流区域の水質
後藤 達夫
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1961 年 82 巻 8 号 p. 994-1000

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抄録

北上川の上流区域の各河川の水質を調査した結果,赤川は,その源付近で松尾硫黄鉱山の酸性水の流入の影響を強く受けて,強酸性を皇し,また硫酸イオン,カルシウムイオンおよび鉄などを著量に含有しきわめて特徴的な水質を示していることを明らかにした。また赤川の水質と下流松川の水質,さらに北上川本流の水質との関連について検討した結果,北上川の上流の水質は赤川の水質の影響をかなり強く受けていることを明らかにした。
また,北上川の船田橋地点で, 1957 年 11 月および 1958 年 9 月の出水の時期に北上川の水質の変化の模様について調査した結果, 1957 年 11 月の出水の場合には,流量が大になるにつれて pH, アルカリ度は増加し,これに反して硫酸イオン,塩素イオン,カルシウムイオンおよび鉄などの濃度は減少して中性に近づいている。しかしながら, 1958 年 9 月の洪水の場合には,とくに流量の最大値付近において, pH が小さく酸度が高まり,また硫酸イオン,カルシウムイオンおよび鉄などの濃度が増加している。後者の場合は,赤川上流の松尾硫黄鉱山地域にかなり集中的な豪雨があり,そのため鉱山地域からの酸性水の流出水がいちじるしく増加したためと考えられる。

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