日本化學雜誌
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一酸化炭素を用いる新しい合成反応
堤 繁
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1966 年 87 巻 10 号 p. 1014-1028,A57

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抄録

一酸化炭素は求核試剤としての作用が強く,とくに有機金属化合物に対して特異な反応を示す。有機リチウム化合物に-70℃で一酸化炭素を作用させると対称ケトソが好収率で合成され,ニッケルカルボニルを作用させるとリチウムアロイルーあるいはアシルーニッケルカルボニラートが生成される。リチウムアロイルニッケルカルボニラートはハロゲソ化物および不飽和化合物に対して反応性に富んでおり,特異な反応を選択的に行なう。たとえば,アセチレソ化合物との反応は高収率で1,4-ジケトソの生成に導く。多核の鉄カルボニルとハ麿ゲソ化物との反応による炭素一鉄σ結合をもつσ錯体の生成が認められ,この錯体はオレフィンと良好に反応して飽和および不飽和の付加物を与えることが見いだされた。これと関連してオレフィンからのα,β不飽和カルボユル化合物の合成が行なわれ,こうしてオレフィンの水素のカルボユルを含む官能基による置換反応が合成的に行なわれうることが示された。また白金電極を用いての電解条件下においてオレフィンと一酸化炭素を反応させることにより,α,β-不飽和カルボン酸の合成が行なわれた。この電解カルボメトキシ化反応における活性種であるカルボメトキシ白金カルボニル化合物が単離され,そのオレフィンに対する挙動が検討された。また,一酸化炭素がラジカル反応を行ないうることに注目して,水銀光増感反応および放電反応による水素と一酸化炭素からのホルムアルデヒドおよびグリオキサールの合成が検討された。

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