日本化學雜誌
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ピナコール転位のオルト効果
松本 澄後藤 良造世良 明浅野 努
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1966 年 87 巻 10 号 p. 1076-1082,A60

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抄録

2,2'ジハロゲン-,2,2'ジメチル-,および2,2-ジアルコキシベンズピナコールをヨウ素-酢酸系で転位させ,その生成物を薄層ク戸マトグラフィーで分離し,その構造を確認し,さらに秤量法と分光光度法とによってオルト置換フェニル基の転移傾向を求めた。その結果,i)オルト置換フェニル基の転移傾向は,対応するパラ置換フェニル基のそれにくらべいちじるしく小さい。ii)o-アルコキシフェニル基の転移傾向は,アルコキシ基の大きさとともにわずかではあるが減少している。iii)o-アルコキシフェニル基の転移傾向は,メソ体で観察されるものの方がラセミ体のそれより大きい。iv)o-アルコキシ置換化合物の場合メソ体とラセミ体との異性化が認められるのであって,反応率の増加とともにメソ体で観察される転移傾向とラセミ体のそれとの差が小さくなる。これらのことから,o,o'二置換ベンズピナコールでは,観察される転移傾向が一般に立体配置を保持した水和炭素陽イオンと平面炭素陽イオンとの相互変換の寄与の程度,転移の遷移状態における極性置換基効果,立体置換基効果およびエクリプス効果によって規制されることが結論される。

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