日本化學雜誌
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過酸化ニッケルとtert-ブチルフェノール類との反応
杉田 実男
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1966 年 87 巻 10 号 p. 1082-1088

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抄録

ニッケル塩をアルカリ性で次亜ハロゲン酸ナトリウムで酸化すると過酸化ニッケル(Ni-PO)が得られる。著者はこの過酸化ニッケルの化学的性状を知る目的で,フェノール類との反応について研究を行なってきたが,本報では`認一ブチルフニノール類との反応の結果について報告する。
2,6-ジ-tert-ブチル4-メチルフェノール(1)と過酸化ニッケルとの反応では,主生成物として3,3t,5,5tテトラ-tert-ブチルスチルペンキノン(V)と3,3t,5,5t-テトラ-4-ブチルジノキノソ(iii)を得,少量生成物として1,2-ピス-(3',5-ジ-tert-ブチル-4-オキシフェニル)-エタン(VI),1-メチル-1(3',5-ジ-tert-プチル4オキシフェニル)-3,5-ジ-'tert-ブチル-1,4-ベンゾキノソ(iiii),3,5-ジ-tert-ブチル-4-オキシペンジルアルコール(VII),3,5-ジ-tert-ブチル-4-オキシベンズアルデヒド(VII),およびごく微量の2,6-ジ-tert-プチル-1・4-ベソゾキノン(XV)を得た。これらのうち,IIIを単離したことは,この反応の第1の経路として参p-ラジカルを経由することを証明するものである。
p-tert-ブチルフニノール(XVII)の場合は反応生成物として,ポリマー(L-1)および(L-2)を得た。これらの平均分子量はそれぞれ730および1680で,両者ともほとんど同じ赤外吸収スペクトルを与える。ジアゾメタソでメチル化を行なうと,ポリマー中に含まれる酸素原子の約1/3当量がメトキシル基となる。ポリマーの構造として酸素原子中約1/3がフェノール性OHとして存在し,残りの213はエーテル結合をしているものと考える。
o-tert-プチルフニノール(XXI)の反応では,ポリマー(M)が生成する。このポリマーの平均分子量は3600で,同じようにメチル化法で調ぺると,酸素の大部分がフェノール性OHとして存在する。このポリマーの構造として,ベンゼン核の4,6-位で直鎖状につらなったものを考えた。上記の反応の機構についても考察を行なった。

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