日本化學雜誌
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寒天ゲルのレオロジー的性質
尿素を添加した濃厚アガロースゲルの応力緩和
渡瀬 峰男荒川 泓
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1971 年 92 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

四国産テングサ原藻から抽出した寒天をアクリノールを添加して寒天二成分アガロース(AG),アガロペクチン(AP)に分離した。熱可逆性ゲルである寒天ゲルの力学的挙動の大部分をしめるAGのゲル化機構を調べるために,タンパク質変性剤である尿素を添加したAGゲルについて応力緩和実験を行なった。AGの3.48~6.3wt%の濃厚水溶液に,8 mol/lの濃度まで尿素を添加した試料ゲルについて25~55°Cの範囲の温度で4時間までの応力緩和曲線を求めた。緩和曲線は3個のMaxwell模型を並列にした力学模型で解析し,その結果について考察を行なった。
ゲルの主要三次元構造に対応するとみられる最長緩和時間を有するMaxwell模型に属する弾性定数E1は,AGゲルに尿素を添加するにつれて減少し,添加尿素濃度6 mol/lまでは緩慢であるがほぼ直線的に減少し,6 mol/lでゲル弾性率は尿素無添加濃度の同濃度AGゲルのゲル弾性率の約80%程度まで減少した。
添加尿素濃度7 mol/lでゲル弾性率は急激に減少し8 mol/lで事実上外見的には0に近づいた。減少する割合はAG濃度と尿素濃度の相対的比率に依存することが少なく,水溶液中の尿素濃度それ自身の値によって主として支配される。同じく主要構造に対応する最長緩和時間τ1は尿素添加量に依存せずに約6 mol/lまで一定値を示し,7 mol/l以上になると減少する傾向を示す。τ1の温度変化から求めた見かけの活性化エネルギーは,AG濃度,尿素濃度に依存することなく全試料ゲルの平均値は約5.0 kcal/molの一定値を示した。
以上の結果,濃度AGゲルに尿素を添加するとゲル形成能の受ける影響は,既報1)の寒天に尿素を添加した場合と類似した傾向を示した。しかしその低下の傾向は6 mol/l以下ではより少ない。

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