日本化学会誌(化学と工業化学)
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溶融塩中でのエチルベンゼンと塩素との及応に関する一考察
吉川 彰一林 隆俊大津 昇野村 正勝
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1974 年 1974 巻 1 号 p. 112-117

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抄録

著者らは,NaCI,KCIとCuC1またはZnC12との混合溶融塩存在下でC6H: C CH3とCI2,の反応を250~450℃で試み,混合溶融塩の組成と生成物分布との関係を検討した。
生成物はおもにスチレン系化合物とβ-クロロエチルベンゼンであり,反応温度350。Cではスチレン系化合物の生成率は:Lewis酸型のZnCI2存在下よりもイオン型のCuCI存在下の方が大きいことな認めた。この反応を無触媒気相下で行なうと,おもにC,H5CH(Cl)CH3とC6H5-CH2CHC1が得られ,スモチレン系化合物はあまり得られなかった。
他方,C6H5-CH2CH2C1とC,H5CH(Cl)CH3をそれぞれ,溶融塩中に吹き込んで脱塩化水素反応を試みたところ,前者はほとんど脱塩化水素反応を起こさなかったが,後者は塩の種類に関係なく定量的にスチレンを与えたことから,溶融塩中で生成するスチレン系化合物は,CGH5-CH(C1)CH3を中間体としているものと推察される。
また,エチルベソゼソと塩素の反応を,芳香核とコンプレックスを形成する作用をもつHCIガス共存下で試みた。その場合,側鎖エチル基のα-位:とβ-位の塩素原子との相対的反応性を便宜的に示す比率(スチレン系化合物+α-クロPtエチルベンゼン)×1/2/(β-クロPt =チルベンゼン)×1/3が,窒素気流下の反応のそれよりも小さくなる傾向をもつことが認められた。
以上のことから判断すると,ZnC12塩存在下の反癒でC廿C1塩よりもスチレン系化合物が少なくなるのは,HC1と類似したLewis酸型のZnC12とエチルベンゼンの芳香核とがコンプレヅクスを形成する結果,側鎖エチル基のα-C-Hと塩素原子との反応性が相対的に低下し,スチレンの前駆体であるC,H,CH(C1)CH3の生成量が減少することに起因していると推察された。

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