日本化学会誌(化学と工業化学)
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セルロース結晶変態の赤外吸収スペクトル(その1)
林 治助末岡 明伯渡辺 貞良
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1974 年 1974 巻 7 号 p. 1320-1328

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抄録

著者らはセルロース(以下Ce11と略記する)の各種結晶変態をその構造履歴現象からI系(I,IIII,IVI)とII系(II,IIIII,IVII)に分類し,前者は"bent"型の後者は"bent-twisted"型の分子鎖形態を有すると考えた。一方,分子鎖間の充テン状態に関係する,赤道線干渉および単位胞の形はCell I,IVI および1VIの間で,またCell II,IIIIIおよびIIIIIの間で類似している。本研究ではセルロース各種結晶変態の重水置換後の赤外吸収スペクトル,とくにOH,OD伸縮吸収について比較し,各変態間でどのような類似性を示すか検討することにより,吸収と結晶構造との関連を明らかにせんとした。
I系および II系変態ではそれぞれ1個および2個のO 3 → O 5'分子内水素結合による吸収があるが,この結合が"bent"型では1種,"bent-twisted"型では2種存在することに一致する。 Cell IIIIにおけるこの吸収はI系の他の変態にくらべ高波乱言に存在するが,これはI系ながらIIIIのみが逆向する分子瞬間で O 6 O 1" O 5"の分子間水素結合を形成し得ないためで,非晶域の分子内水素結合に関する OD吸収はI系内ですべて波数が一致致する。II系変態間においても同様であり,分子鎖形態に関する著者らの考えが支持された。

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