日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1974 巻, 7 号
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  • 山村 博, 白崎 信一, 高橋 紘一郎, 高木 実
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1155-1159
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ba(OH)2とTiCl4,との水溶液反応からチタン酸バリウムの合成に成功した。得られた生成物の乾燥試料は結晶性の悪い立方ペロブスカイト講造を有する。熱処理温度が増加するにしたがって結晶化が進み,格子定数は減少する。1200℃の熱処理で正方相に変わり,その正方ヒズミは熱処理温度の増加とともに増大する。1400℃焼成試料のc/aは1.0057と得られた。化学分析の結果は0.14wt%のナトリウムを含むことを除けば,ほぼ完全な化学量論組成を有するチタン酸バリウムであることを示しているが,密度の実測値が異常に小さいことはなんらかの格子欠陥の存在を示唆している。またその誘電的性質はBaCO3とTiO2の固相反応から得られたチタン酸バリウムと比較して,誘電率は概して低く,Curie点の低下,およびその転移点での誘電異常ピーク幅の広がりが認められた。これらの相違点を理解するため,密度が異常に小さい点に着目して格子欠陥量を算出した。この格子欠陥は特定のイオン欠損ではなく,すべての成分元素を含み,しかもその割合がBaTiO3に相当するような種類の欠陥であることが明らかにされ,しかもこの格子欠陥量とCurie点および正方ヒズミとの間に直線関係があることが判明した。
  • 美濃 順亮, 常盤 文克
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1160-1165
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陰性(NaCi2S),陽性(C12TAC),および非イオン性(C12(EO)7)界面活性剤水溶液,および比較のためいろいろの極性の水-有機溶媒混合溶媒でメロシアニン色素の電子スペクトルを測定した。メロシアニン色素の電子スペクトルは溶媒の極性に対応して敏感に遷移することから,界面活性剤ミセル表面近傍の溶媒層の極性を推定するための有効な探り針となる。
    ミセル溶液における色素の遷移エネルギーETおよび見かけの酸解離定数KaAを求めた。 KaAとミセル表面における色素の真の酸解離定数Kai(S)との差は色素が溶解したミセル表面の静電的ポテンシャルψによって説明することができる。このようにして求めたψはNaC12S,C12TAC,C12(EO)7についてそれぞれ -157,33,12mVを得た。溶媒の誘電率εと色素のETの関係(図7)から推定したミセル表面近傍の溶媒層の有効誘電率は,NaC12S,C12TAC,C12(EO)7についてそれぞれ31,72,78であった。これらの有効誘電率は,Boothの誘電飽和の理論式から求めた値とよい一致を見た。さらにミセル溶液における色素の変色機構についても考察した。
  • 酒井 義郎, 定岡 芳彦, 高丸 芳典
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1166-1169
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超音波による硫酸酸性水溶液中のFe2+の酸化およびCe4+の還元反応を比較した。いずれの反応も400kHzの超音波を使用した方が29kHzの場合より反応速度がはるかに大であった。10-3~10-1mol/lのFe2+初濃度ではFe3+の生成速度は濃度に依存しないが,それ以下の濃度では濃度とともに速度も減少するCe3+の生成速度はCe4+の初濃度には依存しない。窒素を飽和した溶液では空気を飽和した溶液にくらべぞFe2+の酸化反応速度は1/9, Ce4+の還元反応速度は1/6.5であった。超音波の出力を上げでいくと,Fe2+の酸化反応速度が最大になる点があり,その出力以上では逆に速度は低下する。Ce4+の還元反応では出力と反応速度は比例する。出力と速度が比例する部分で, Fe3+とCe3+の生成量の比は同一出力の点で1.17であり,これはα線による同じ反応のG値の比G(Fe3+)/G(Ce3+)=1.43に近い値である。γ線の場合はG(Fe3+)/G(Ce3+)=6.33であるので超音波による水溶液中の反応はα線による反応に類似していると思われる。
  • 荒川 敏, 針谷 伸一, 斎宮 英紀, 寺沢 誠司
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1170-1175
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    45℃,常圧および1000kg/cm2までの各圧力下で,エタノール中におけるカリウムエトキシドの当量電導度およびエタノール中でのカリウムエトキシドによる臭化エチルの求核置換反応の二次速度定数をそれぞれ実測した。
    カリウムエトキシドイオン対のイオン解離の体積変化を,当量電導度に対する圧力効果から求めた結果は-39ml/molであった。求核置換反応の二次速度定数はカリウムエトキシドの解離度と直線関係を示し,各圧力下における無限希釈のエトキシドイオンによる臭化エチルの求核置換反応の二次速度定数を求めた。本反応の活性化体積は-2.7ml/molであった。
    本活性化体積はIngoldが提案した電荷分散の遷移状態とよくあうことを考察した。
  • 高光 永明, 浜本 俊一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1176-1179
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサンの自動酸化の中間体の一つとしてみなされたシクロヘキサノンペルオキシド(CYP)を合成し,その分解に対する雰囲気,溶媒および脂肪酸の効果について研究した。この主分解生成物はシクロヘキサノンであり,またその分解速度は前述のすべての場合について,CYP濃度に関し一次であった。その速度は雰囲気および溶媒で異なり,その速度定数は,N2>CO>CO2>He>H2>Air>02(シクロヘキサノン収率は雰囲気によって影響された),および,酢酸シクロヘキサノン>シクロヘキサノール>クロロベソゼソ,1-ドデカノール>n-ドデカン>トルエンの順にそれぞれ減少した。その速度に対する溶媒の加速効果が認められ,その速度定数の対数は,n-ドデカンおよび酢酸を除いて,(D-1)/(2D+1)(D:溶媒の誘電率)の値と直線関係にあった。シクロヘキサノール中,80~120℃におけるその分解に対する活開化エネルギーは13.8kcal/molとして計算された。他方,脂肪酸の添加は分解をかなり加速し,その速度定数(k)の対数はその酸強度(pKa)とほぼ直線関係にあった。3,8mol%のプロピオン酸を含有するn-ドデカン中,80~120℃におけるその分解に対する活性化エネルギーは18.1kcal/molとして計算された。
  • 赤木 洋勝, 藤田 勇三郎, 高畠 英伍
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1180-1184
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化水銀(II)および酢酸水銀(II)の酢酸水溶液について,水銀の光メチル化反応性を比較検討し,光メチル化反応機構を考察した。
    ブラックライトランプによる照射実験において,塩化水銀(II)と酢酸水銀(II)との間には,各水溶液中におけるメチル水銀化合物の生成速度にいちじるしい差異のあることが認められた。また,酢酸水銀(II)の酢酸水溶液の紫外吸収スペクトルは塩化水銀(II)の酢酸水溶液のそれにくらべて長波長側にのびていることが認められた。光メチル化反応の波長依存性をモノクロメーターを用いて測定したところ,光メチル化反応の波長依存性スペクトル各水溶液の吸収スペクトルとの間には平行関係のあることが判明した。
    酢酸水銀(II)の酢酸水溶液の場合には,ガスクロマトグラフィー分析によって,光メチル化反応にともなって生成するガスは二酸化炭素,メタンおよびエタンであることが認められ,また,二酸化炭素の濃度が他の生成ガスにくらべて圧倒的に高いことが確かめられた。したがって,光メチル化反応は主としてケージ内反応(光脱カルボキシル化反応)によって進行するものと考えられる。
  • 蛯谷 厚志, 新山 浩雄, 越後谷 悦郎
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1185-1188
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    γ-アルミナ担持の酸化鉄触媒上での一酸化窒素の水素による還元反応の機構について研究した。その結果,反応機構は触媒の酸化還元サイクルを経て進行する,いわゆるredox mechanismであることが明らかになった。この判定の根拠は,前報の速度論的考察とつぎの二つの実験結果である。
    (i)パルス反応において,水素なしで一酸化窒素はあらかじめ還元された鉄触媒により還元されうる。その上,水素を共存させても一酸化窒素の転化率はあまり変わらなかった。
    (ii) 封鎖循環系で,鉄触媒上での一酸化窒素の反応速度と鉄触媒の水素による還元速度を測定したところ,2×10-5 および 3×10-5 mol/min g-cat(300℃)であり,よい一致を示した。
  • 菖蒲 明己, 原納 淑郎, 井本 立也, 加納 久雄
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1189-1194
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ag-K2SO4-Al2O3触媒上における13C濃縮エチレンとエチレンオキシドの競争酸化反応を146~256℃および0.1<Rp<3の範囲で行ない,反応条件をかえて生成二酸化炭素中の炭素同位体比 Ir と frを測定した。ここで,Rpは13C濃縮エチレンとエチレソオキシドの分圧比, frは全生成二酸化炭素量に対するエチレンオキシドからの二酸化炭素生成量の比率である。frはRpの増大につれ減少し, Rp<3でfr>0.5であった。またfrは高温度,低酸素圧および接触時間の長いほど増大し,エチレン酸化反応の選択率は逆に低下することを実験的に確認した。これらの結果は,エチレン酸化反応の動力学に率いてエチレンオキシド消失項を無視することは不可能であり,選択率の低下はエチレンオキシドの燃焼性に起因することを示唆している。
    競争酸化反応時に生成した触媒上の残留物(銀グリコオキシド)のfr値測定結果から,その一部はエチレンから直接生成しており,エチレンとエチレンオキシドの燃焼中間体は同一であることが推定された。さらに,frは各触媒で異なり, Ag-K2SO4粉末<銀粉末<銀線<Au<NiO<CuO<PdO の序き列で大となり,frの大きい触媒では吸着エチレンオキシドは不安定で,frの小さい触媒ほど高い選択率を有することが実証された。
  • 金高 純一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1195-1198
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    レニウムとニッケルとの原子比を0~0.15の範囲で調製したニッケル-レニウム-ケイソウ土触媒による無水マレイン酸の水素化反応を行なった。ニッケル-ケイソウ土触媒の場合のテトラヒドロフラン収率は1.9wt%であったが, Re/Ni原子比を0.15とした触媒では39.9wt%と大当に増加した。
    レニウム触媒による無水マレイン酸,無水コハク酸およびコハク酸の水素化反応を行ない,ニッケル-レニウム-ケイソウ土触媒との比較を行なった。
    各種組成のニッケル-レニウム-ケイソウ土触媒についてX線回折を行なった。Re/Ni原子比の増大にしたがって,ニッケル(111)面の格子間距離が増大し,ニッケルとレニウムとは固溶体を形成していることがわかった。さらにニッケル(111)面の格子間距離とテトラヒドロフラン収率との間には直線関係が認められた。レニウムの添加効果を活性の持続および活性の向上に寄与するものと考察した。
  • 久保 俊彦, 荒井 弘通, 冨永 博夫, 功刀 泰碩
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1199-1203
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ライトY担持パラジウム触媒はNaYをPd(NH8)4 2+でイナソ交換することによって得られるPd(NHs)4 3+ -NaYを空気焼成したのち,水素還元することによって調製した。パラジウム粒子の粒径分布,平均粒径ならびに単位面積あたりのパラジウム粒子数を決定するために電子顕微鏡を使用した。パラジウムの粒径,粒径分布および単倖面積あたりの粒子数は空気焼成温度によって制御されることが明らかになった。シクロヘキサンの脱水素活性はゼオライト単位面積当りの全パラジウム表面積によって説明されたが,水蒸気存在下におけるプロピレンの酸化反応については十分に説明することができなかった。示差熱分析およびX線回折法によってゼオライトY上のパラジウムイオンの凝集機構に関する知見が得られた。
  • 大庭 有二, 小門 宏, 井上 英一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1204-1208
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルミニウム板上に酸化亜鉛樹脂層を塗布し,像を露光したのち塩化ニッケル溶液中に浸漬することにより,酸化亜鉛の光電導を利用して,画像形成が行なえる。ニッケルの析出濃度は,添加物の影響を強く受けるため,現像促進剤の探索を行ない,同時に3種類のメカニズムを考察した。ポーラログラフィーによる溶液の電流電位曲線によると,Na2S208で代表される第1の促進剤は,塩化ニッケルと相互作用し,ニッケルの析出を容易にする効果があった。PdCI2で代表される第2の促進剤は,酸化亜鉛上に析出を推定される促進剤の金属の仕事関数と,その標準酸化還元電位で検討した。前者は促進剤からの析出物が酸化亜鉛と接触することにより,酸化亜鉛表面の電位障壁に影響を与えると推定し,後者は酸化亜鉛上に還元析出した促進剤により酸化亜鉛極のニッケル還元過電圧が減少すると推定した。また第1と第2の促進剤のメカニズムは個別であり,相乗効果があることを示した。
  • 大庭 有二, 小門 宏, 井上 英一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1209-1212
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきにも報告のした陽極の還元力を酸化亜鉛の光電導により制御して,電解反応により画像形成を行なわす電概論電子写真法り塩化ニッケル,塩化アンモニウム,チオ硫酸ナトリウムからなる現像液は,中性付近でもっとも高いニッケル析出濃度を示し,酸性側ほどニッケル析出効率が下がった。約pH 6以下では現像液が疲労しやすく,この原因は,申性以上で生成するニッケルアンミン錯体が電解反応に関与するためと推定した。ニッケル析出反応の促進剤であるチオ硫酸ナトリウムは,10-s mol/1までニッケル析出反応を増加させる作用に寄与したが,それ以上の濃度では,アルミニウム基板とニッケルイオンの直接反応を増加させる原因となった。これらの現像液中で測定した酸化亜鉛と接触したアルミニウム基板の電位は主としてアルミニウムとアルミニウムイオンの平衡と,アルミニウムイオンと塩化物イオンの平衡関係によりなり立ち,塩化物イオン濃度の関数であると推定した。この電位の安定性は,アルミニウムと遊離ニッケルイオン(アクア錯体イオン)との直接反応による電荷消費が原因と考えられ,遊離のニッケルイオンの減少により電位は安定化した。
  • 伊藤 俊治
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1213-1219
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炉紙を隔膜とし,1mol/l塩化鉄(II)水溶液と1N水酸化ナトリウム水溶液との間で反応を進めた。反塔の進行にともない,塩化鉄(II)側の沸紙膜面に金属を含む反応析出物が生成する。この水溶液反応からの鉄の生成機構について論じた。
    反応時間経過に対する反応析出物中の金属鉄と鉄化合物の生成量および水酸化鉄(II)の消費量を鉄の形態分析から求めた。その結果,金属鉄の生成反応はつぎの式にしたがって進行することが明らかになった。
    FeCl2+2NaOH---Fe(OH)2+2NaCl (10)
    3Fe(OH)2---Fe+2a-FeOOH+2H2O (2)
    生成するゲーサイトが活性の場合,(2)式の反応の自由エネルギー変化dG999は+3.5 kcal/molであるが不活性の場合には-3.9kcal/molとなり反応は右辺に進行する。
    反応析出物はそれ自身陰イオン交換膜としての画質をもつため,析出物中に数多く存在する細孔中の水酸イオン濃慶はこれら細孔の陰イオンの透過能の差異によってたがいに異なるものと推定される。反応析出物の主戒分である水酸化鉄(II)がpH億の上昇によりジハイポフェライトイオン(Dihypoferriteion,HFeO2-)に解離し,ついで濃淡差に基づくつぎの電極反応により金属鉄の生成が進行するものと考えられる。3Fe(OH)2 --- 3HFeO2- +3H+ (14)
    2HFeO2- --- 2a-FeOOH+2e (16)
    HFeO2- 3H+ +2e --- Fe + 2H2O+ (17)
    この(14),(16)および(17)式の和は(2)式として示され,水溶液からの金属鉄の生成は鉄(II)の不均化反応によって生成することが明らかとなった。
  • 石井 英一, 三宅 義造
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1220-1223
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化ヒ素(III)の水素還元によるヒ素の製造について,若干の速度論的考察を行なった。石英製の流通法による装置を用い,未反応の塩化ヒ素(III)はドラィアイス-アルコールトラップで凝固させたのち,野生した塩化水素を定量することによってヒ素の生成速度を求めた。
    この装置による見かけの活性化エネルギーは546~672℃で21.7kca1/mol,672~795℃で38.2kca1/mo1の値をそれぞれ得た。また水素還元の熱力学的平衡を文献のデータから計算し,これと実際の結果とをくらべ,用いた装置で温度850℃,水素量2当量でほぼ理論値に近い反応率の得られることを認めた。
    また結晶状ヒ素を得る目的でとりつける結晶生長管の保持温度と,水素の混合量ならびにヒ素の析出率の理論的な関係を明らかにした。実際の操作では,反応部の温度850℃,水素混合量2~3当量,結晶生長管の保持温度350~400℃付近で行なうのが好ましいと判断した。
  • 柏瀬 弘之, 佐藤 源一, 成田 栄一, 岡部 泰二郎
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1224-1229
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロム鉱石の溶融ナトリウム塩分解生成物からクロム酸ナトリウム,水酸化ナトリウムなどの塩類を溶解度差によって分離することに関連して水酸化ナトリウム水溶液中ならびに水酸化ナトリウムを含有するメタノール水溶液中のクロム酸ナトリウムの溶解度をそれぞれ15,25,35,45℃および25,35℃で測定するとともに,液底体の組成を調べた。
    Na2CrO4-NaOH-H2O系においては,クロム酸ナトリウムの溶解度はNaOH濃度の増加とともにいくつかの変曲点をもつ曲線に沿って減嘱する。液底体はNa3CrO4-10H2O, Na2CrO4-4 H2O, Na2CrO4-1 1/2 H2O, Na2CrO4, Na4CrO5,13H2Oなどであるが, Na2CrO4-10H2Oは25℃以上では存在せず,またNa4CrO5-13H2Oは35℃以上では消滅してNa2CrO4-1 1/2H2Oが出現する。
    Na2CrO4-NaOH-CH3OH-H2O系においては,メタノール水溶液に対するクロム酸ナトリウムの溶解度は非常に小さく,CH8OH濃度50%以上ではCH8OH濃度の増加とともに急激に減少する。水酸化ナトリウム10~20%の存在下では,クロム酸ナトリウムの溶解度は,さらに1/4~1/10に低下することが明らかとなった。液底体はNa2CrO4-4H2O,Na2CrO4,1 1/2 H2O,Na2CrO4などである。
  • 竹田 一郎
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1230-1234
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフの定量分析で熱伝導度型のような濃度依存性の検出器を使用するときは,キャリヤーガス流速は測定中一定にたもたれねばならない。しかし実際には,「ピーク溶出にともなう固定相からの試料成分の離脱」および「試料成分とキャリヤーガスの粘度の相違」により,測定中にキャリヤーガス(キャリヤーガス+試料成分)の流速変動を起こし定量値に誤差を与える。
    本報では,主として前者の原因による誤差につき理論的考察を行ない,実験結果と比較し,またその減少法につき検討を加えた。その結果,試料量:1~3μl,信号電圧60mV程度の分析によく使用されている測定条件でも,本原因による積分器での計数値誤差は2~3%に達することがわかった。その誤差は,一見「検出器での試料濃度一信号電圧の非直線性」によるもののように解されやすいが,この程度の濃度ではこれらの影響はほとんどみられなかった。
    また,分離管と検出器との問に,「入口から出口に向って液相量が連続的に減少している分離管」,または,「長い中空遅延管」を接続し,ピーク溶出にともなう流速変動と検出との時間関係を変えてやれば,これらの誤差は大幅に減少できることがわかった。
  • 田中 英樹, 平良 昌彦, 橋詰 源蔵
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1235-1239
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Patterのホモジナイザーで均質化した魚介類試料はドラフト,チャンバー内で赤外線ランプを使用して乾燥した。ミキサー,ミルで微粉砕したのち,この一部は15t/cm2で加圧成型し,ケイ光X線分析法により魚介類中の金属を測定した。
    ケイ光X線に対するマトリックス効果の補正として,測定元素のKaまたはLa線とその近くの散乱線の強度比をとることにより,各金属における分析値の標準偏差は5%以内であった。本補正法により,20μg/gの濃度の標準金属添加におけるカドミウム,鉛,クロムの回収率はそれぞれ95.0~106.0,93.5~101.5,96.0~105.0%であった。
    検出限界は測定時間10~100秒で湿重量あたり,2~0.5μg/gであったが,さらに測定時間を延長することにより,低濃度の検出が可能であった。ケイ光X線分析法による測定値は原子吸光法によるそれにくらべ大差なかったが,前処理操作の迅速性,簡易性ははるかにすぐれていると思われる。
  • 石川 延男, 永島 彰, 林 誠一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1240-1244
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    〔1〕および〔2〕の混合物であるヘキサフルオロプロペン二量体とメタノールおよびアセトアルデヒドを過酸化ベンゾイルの存在下に反応させ,その生成物の構造を1Hおよび19F NMRスペクトルから明らかにした。メタノールとの反応では〔3a〕(エリトロ体),〔3b〕(トレオ体)歯よび〔4〕が2:2:1の比で生成し,これらは分取ガスクロマトグラフにより分離することができた。アセトアルデヒドとの付加物としては〔9a〕(エリトロ体),〔9b〕(トレオ体)および〔10〕の三つが6:2:3の比で生成していることがわかった。また〔3a〕の3,5-ジニトPt安息香酸エステル〔6〕および〔9 a〕の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾソ〔11〕をそれぞれ単一な結晶物質としてうることができた。以上の各生成物の配座とNMRスペクトルとの関係について論じた。
  • 佐藤 槞, 木瀬 秀夫, 妹尾 学, 浅原 照三
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1245-1248
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The cationic telomerization of styrene with aliphatic carboxylic acid chlorides was carried out in methylene chloride in the presence of metal chlorides. The products were treated with sodium bicafbonate, and alkyl styryl ketones (3) were isolated by distillation. The structures of (3) were confirmed by IR, NMR, MS, and microanalyses.
    The reaction conditions were examined in order to obtain the best conversion of styrene to iesults of the reasons with various kinds of acid ehlorides are summerized in Table 4. This suggests that, in the case of linear carboxylic acid chlorides, longer alkyl groups give better yields of (3). By comparison of the reactivity of isomeric acid chlorides, for instance C5 or C6 acid chlorides, it can be seen that a-alkyl groups bring about decreases in both the conbersion of styrene to (3) and the ratio of (3) to the total products, indicating the existence of a steric effect in the reaction.
  • 相馬 勲, 小塚 幸一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1249-1252
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    コバルトフタロシアニン(Co-Pc)およびニッケルフタロシアニン(Ni-Pc)についてアルゴンガス気流中1000℃までの熱分解のようすをTG,DTA,元素含有率,赤外吸収スペクトル, X線回折の測定から調べた。
    Co-Pc,Ni-Pcともに2段型の分解を示し,500℃から昇華を主体とする第1段目の分解が始まり,つついて750℃から窒素の離脱,含有金属の放出をともなう第2段目の分解が起こる。第1段目での重量減少率はNi-Pcの方が,第2段目の重量減少率は逆にCo-Pcの方が大きい。800,1000℃では両者とも非晶質炭素構造となるが,Co-Pcの方がより炭化が進んでいる。これらの結果から,昇華に対しては昇華量が少ないという意味でCo-Pcの方が耐熱性であるが,分子構造としての熱安定性ではむしろNi-Pcの方が安定であるといえる。
    また,フタロシアニンの熱分解は,β型構造から炭素構造への移行過程において,つなぎとして一時的にα型構造をとることがほぼ明らかとなった。
  • 里 一男, 西村 幸雄, 坂井 渡, 中塩 文行
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1253-1257
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マイクロ波アルゴン,水素プラズマジェットによるプロパンの分解反応について知見を得るために,マイクロ波アルゴン,水素プラズマジェットおよびプロパン分解時における温度の測定を行なった。熱電対による温度測定においては,プラズマジェットの平均温度は2000°K以下であり,温度に影響をおよぼすのは出力,アルゴン-水素混合比であり,作動ガス流:量はほとんど関係ないことがわかった。一方,ArIによる励起温度は10000°K以上で,ガス温度に比較してきわめて高く,マイクロ波アルゴン,水素プラズマジェットが熱平衡にはないことを示唆していた。また,プロパン分解時の温度は操作条件によりかなりの差異が認められるが,同温度のプロパンの熱分解結果と比較して,マイクロ波プラズマジェットによるプロパンの分解では,高温でより安定なアセチレンや炭素の選択率が高く,両者の生成物分布にはかなりの差異があることがわかった。
  • 金子 勝三, 星野 利夫, 和田 昭三, 立川 正子
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1258-1263
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ブテン酸化による酢酸合成用V-Sn-W複合酸化物触媒の構造と触媒活性との関連について,示差熱分析,赤外吸収スペクトル,X線回折および化学分析を用いて検討した。
    触媒の焼成温度としては400~500℃が適当で,焼成後の触媒はV205,SnO2,およびWO3,の混合物であった。SnO2は触媒中のV205の酸素の反応性を増し,WO3は触媒の表面積を増加させ,それぞれ活牲の向上に寄与している。酸素非存在下ではV-Sn-W酸化物中のV20,のみが,1-ブテンにより還元されV4O2を生成した。V4O9が共存することによって,より向上するものと考えられる。また触媒の酸量を測定したところ,V205の還元度との間に相関性が認められることから,酸量は触媒活性の重要な因子と考えられた。
  • 金子 勝三, 小谷野 喬, 古川 寛, 和田 昭三
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1264-1268
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オレフィンの気柑接触酸化による酢酸生成の反応径路の解明を目的として,V-Sn-W複合酸化物触媒上での各種オレフィンや推定される反応中間体の酸化反応について検討した。
    エチレン,プロピレン,プテン,イソブテンおよびブタジエンからの主生成物は見かけ上二重結合の切断反応から予想される生成物で,エチレンおよびブタジエンからの主生成物は二酸化炭素および一酸化炭素であるのに対し,プロピレンおよびブテンからは好収率で酢酸が得られた。水蒸気の添加はアリル型酸化反応や酢酸の分解反応を抑制したが,1-ブテンの転化率および酢酸選択率を増加させた。アセトアルデヒドはプロピレンおよびブテンの酸化ではつねに認められ,アセトアルデヒドは高選択率で容易に酢酸に酸化された。しかし反応中間体と推定されるイソプロピルアルコールおよび第二級ブタノールの酸化脱水素反応によって生成するアセトンおよびエチルメチルケトンの酸化ではアセトアルデヒドの生成は認められなかった。
    これらの結果からプロピレンおよびブテンからの酢酸の生成は二重結合の酸化的切断反応やアルコール,ケトンを経る酸化的水和反応によるのではなく触媒の酸性点上のオレフィンから生じるカルボニウムイオンと活性酸素種との直接反応によって生成するアセトアルデヒドから主として生成するものと推定される。
  • 宮川 亜夫, 藤島 一郎, 武上 善信, 鈴木 俊光
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1269-1275
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化アルミニウム触媒存在下でアスファルトを反応させると,アスファルテン分がいちじるしく増加する。アスファルトは直鎖状パラフィン成分の多いものであり,このパラフィン成分がアスファルテンの増加にどの程度の寄与をするかを明らかにする目的で実験を行なった。
    パラフィン成分としてn-ドデカンを選び,反応温度180~200℃で塩化アルミニウムを加えて反応させ,アネファルテン類似物質が生成するかどうか,どのような経過で生成するかなどについて調べた。反応生成物をn-ベンタン可溶分(A)と不溶分(B)とに分離し,Bとストレートアスファルトのアスファルテンを比較検討した結果,アスファルテン類似物質とみなしてよいことがわかった。
    Aをさらにアルミナクロマトグラフによって3成分に分別し,これらの分別成分をもとに反応過程を推察すると,反応は壌素化パラフィンの生成に始まり,弱化反応によるシクロパラフィン類と脱水素反応によるアルキルベンゼン類が生成し,これらの生成物がさらに塩化アルミニウム触媒で活性化されて脱水素および重縮合反応を起こし,アスファルテン類似物質Bが生成されると思われる。
  • 久保田 清
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1276-1282
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカ,アルミナ触媒による炭化水素の接触分解反応は,カルボニウムイオンを含む素反応群からなる複雑な反応であるが,反応装置設計の目的には量論反応式群を半機構論的に求めることが望ましい。また,コーク生成にともなって触媒が劣化していくのを考慮していくには,コーク生成反応を組み入れることが必要になる。
    本研究は,ブタン接触分解を大気圧,450~600℃で行ない,総括反応速度定数を求め,さらに,量論反応式群に含まれる速度パラメーターを,ステップ幅つきMarquardt法を使用して,ガス状生成物分布の実験データから比較値として求めた。ここで,コーク生成反応は,オレフィン生成物の接触分解を行なって得られるガス状生成物分布とコーク組成H/Cの比の値に基づいて設定したが,ブタン接触分解の生成物分布の実験データをよく説明する結果が得られた。
    本研究で得られたコーク生成反応を考慮した量論反応式群は,反応経過時間と反応器の位置の関数として解いて検討を進めることにより,より精度のよい劣化の進行を考慮した反応速度式群を得るのに利用できる。
  • 鈴木 啓明, 神谷 佳男, 太田 暢人, 牛場 紀典
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1283-1288
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    HX型およびHY型合成ゼオライト触媒によるトルエン,クメンおよびn-プロピルペンゼンの不均化反応を常圧固定急流通式反応装置により 200~500℃で行なった。
    H型ゼオライト触媒によるアルキルベンゼン類の不均化反応においては触媒の活性化に誘導期が存在するが,誘導期はLHSVに影響されず,反応温度とアルキル置換基の構造に大きく依存したので,誘導期は不均化反癖中間体の形成過程によるものであると考えられた。不均化反応におけるアルキルベンゼン類の反応性が側鎖によって メチル基<<n-プロピル基<イソプロピル基の順であったので,その反応性は不均化反応中間体のカルボニウムイオンの安定性に大きく依存していると考えられた。
    ゼオライト系触媒によるアルキルベンゼン類の比較的高温における不均化反応は,PinesらやStreitwieserらが低温反応において提唱したように,アルキルベンゼンの側鎖カチオンがペソゼン環から切断遊離するのでなく,ベンゼン環に対してα-位のカルボニヴムカチオンが他の隣接ベンゼン環の分極部位を攻撃し, 1,1-ジフェニルカチオン中間体を経由する機構で進行すると考えるのが妥当である。
  • 杉本 晃, 古山 静夫, 井上 博夫, 井本 英二
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1289-1293
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェナジン環の1-位, 2-位, 1,6-位および 2,7-位に,メトキシ基,ヒドロキシ基,クロロ基,ニトロ基,アミノ基および t-ブチル基などの置換基をもつ計16種のフェナジン誘導体について,暗および光電導性を"サンドイッチ型"または"表面型"セルを用いて測定した。その結果,つぎの点が明らかになつた。
    i)置換基の種類や位置の違いによって,蒸着膜の吸収波長は変わるが,暗電導の活性化エネルギー値は 2.0~2.3eV付近にあり,あまり差がない。 ii)光電導性はケイ光性の有無には関係せず,置換基のつく位置によって大きく影響される。とくに, 1,6-二置換体は他の置換体にくらべて約10~102倍良好な光電導性を示す。しかし, 1,6-位にヒドロキシ基またはアミノ基を置換すると,光電導性は低下する。 iii)酸素が存在すると,光電流いちじるしく低下する。
  • 杉本 晃, 井上 健次, 井上 博夫, 井本 英二
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1294-1298
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェナジン環の1-位または2-位にメトキシ基,6-,7-,8-または9-位にニトロ基をそれぞれ一つずつもつ8種のメトキシニトロフェナジン(以下〔1.6〕,〔1.7〕,〔1.8〕,〔1.9〕,〔2.6〕,〔2.7〕,〔2.8〕,〔2.9〕と略記する)を合成し,1- または 2-ニトロフェナジン(それぞれ〔6〕,〔7〕と略記する)とともに可視光照射下の光電導性を検討した。光電流 ip と光強度Iとの間には,log ip ∝ n log Iの関係が成立し,nの値は 0.5と 1.0との間にある。光電流の大きさは〔7〕 > 〔1.7〕 ≈ 〔2.8〕 > 〔1.8〕 ≈ 〔2.7〕 > 〔1.6〕 > 〔6〕 > 〔1.9〕,〔2.6〕,〔2.9〕の順に小さくなり,〔1.9〕,〔2.6〕および〔2.9〕には光電流は見られない。ニトロ基がフェナジン環のβ-位につくと光電流は大きく,α-位につくと低下する。メトキシ基は光電流を小さくする効果を示す。α-ニトロ置換体のうち,1.6-二置換体では光電流が認められる。すべての試料の光電導性は雰囲気を窒素から空気に変えると低下する。以上の事実を見いだした。
  • 杉本 晃, 加藤 紳司, 井上 博夫, 井本 英二
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1299-1301
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,5-ジアセチルアントラセン(2), 1-アセチルアントラセン(3), 9-アセチルアントラセン(4),1,5-ジクロロアントラセン(5), 1,5-ジエチルアントラセン(6), 1,5-ジメトキシアントラセン(7), 9-シアノアントラセン(8)および置換塞のないアントラセン(1)の光庵導性を検討した。(1),(5),(6),(7)および(8)の光電流スペクトルはそれらの蒸着膜の吸収スペクトルに対応するが,(2)と(3)の場合には吸収スペクトルの吸収端波長付近に異常な光慨流ピークを示す。光電流の大きさは 1,5-二置換体=(1) < 一置換体の順となり,(4)は光電流を示さない。フェナジン類の場合とは逆に,アントラセン誘三体の光電導性は雰囲気を窒素から空気に変えると良好になる。
  • 三刀 基郷, 松井 繁明, 田中 銀之輔, 箕浦 有二
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1302-1308
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ビニルピリジン(2-VP)をポリ磁化ビニル(PVC)存在下で50℃で加熱すると,無触媒でも重合することを見いだしたので,その重合機構について研究した。この系では,重合はいわゆるマトリックス重合ではなく,PVC中のペルオキシドによるラジカル重合で進行することを明らかにしたが,その重合動力学式は Rp=k[2-VP]0.6~0.8[PVC]0.4~2.0 であり,通常のラジカル重合動力学式に一致しなかった。PVC存在下での共重合,他のビニルモノマーの重合,動力学の詳細な検討などにより,開始,生長,停止反応に検討を加え,PVCと2-VPとの間に相互作用が存在することを明らかにした。
  • 瀬口 忠男, 幕内 恵三, 諏訪 武, 田村 直幸, 阿部 俊彦, 武久 正昭
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1309-1314
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    放射線照射によって, ポリ(フッ化ピニリデン)に捕捉されるラジカル種をESRで同定した。さらにこれらのラジカル種の安定性および酸素との反応を調べ,ポリ(フッ化ビニリデン)の橋かけ,崩壊との関係について検討した。-196℃で捕捉される全ラジカルのG値は3.3でおもなラジカル種は-CH2-CF-CH2-,-CH2-CF2である。室温では,-CH2-CF-CH2-と共役系ラジカルの-(CF=CH)n-CF-である。
    これらのラジカルは酸素と反応して過酸化ラジカルに転換する。酸素はポリ(フッ化ピニリデン)の結晶内部にも拡散し,ラジカルと反応するため,空気中において低線量率で照射した場合には,生成ラジカルは過酸化ラジカルになり,したがってポリ(フッ化ピニリデン)は橋かけしない。
  • 後藤 富雄, 和泉 学
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1315-1319
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合,アニオン重合により得られたポリ(メチルアクリレート)(PMA)に各種ポリエチレンポリアミンを反応させて水溶性重金属捕捉高分子を合成し,泡沫処理による水中の微量重金属に対する除去効果を検討した。
    ポリエチレンポリアミンとしては,エチレンジアミン,ジエチレントリアミン,テトラエチレンペンタミンを使用し,エチレンジアミンの場合良好な重金属除去効果が得られた。カドミウム,鉛,銅亜鉛は効率よく除去回収され,とくにカドミウムの場合もっともよい結果を示した。アニオン重合ポリマーに対し,エチレンジアミン10倍モル使用し,ジメチルホルムアミド溶媒中,130℃,7時間反応生成物についてカドミウム1ppm水溶液の泡沫処理を行なった結果,カドミウムの除去率は 99.9%以上であり,最適 pH範囲は7.O~9.0であった。pH 7での最適添加量は160~250ppmであった。
  • 林 治助, 末岡 明伯, 渡辺 貞良
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1320-1328
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはセルロース(以下Ce11と略記する)の各種結晶変態をその構造履歴現象からI系(I,IIII,IVI)とII系(II,IIIII,IVII)に分類し,前者は"bent"型の後者は"bent-twisted"型の分子鎖形態を有すると考えた。一方,分子鎖間の充テン状態に関係する,赤道線干渉および単位胞の形はCell I,IVI および1VIの間で,またCell II,IIIIIおよびIIIIIの間で類似している。本研究ではセルロース各種結晶変態の重水置換後の赤外吸収スペクトル,とくにOH,OD伸縮吸収について比較し,各変態間でどのような類似性を示すか検討することにより,吸収と結晶構造との関連を明らかにせんとした。
    I系および II系変態ではそれぞれ1個および2個のO 3 → O 5'分子内水素結合による吸収があるが,この結合が"bent"型では1種,"bent-twisted"型では2種存在することに一致する。 Cell IIIIにおけるこの吸収はI系の他の変態にくらべ高波乱言に存在するが,これはI系ながらIIIIのみが逆向する分子瞬間で O 6 O 1" O 5"の分子間水素結合を形成し得ないためで,非晶域の分子内水素結合に関する OD吸収はI系内ですべて波数が一致致する。II系変態間においても同様であり,分子鎖形態に関する著者らの考えが支持された。
  • 池田 功夫, 木戸 猪一郎, 鈴木 公宏
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1329-1335
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    まず6-ナイロンにLi,NaまたはKメトキシドのメタノール溶液を作用させてメタル化する反応,ついでメタル化されたナイロンにアクリロニトリル(AN)のテトラヒドロフラン(THF)溶液またはジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を作用させてアニオングラフト重合させる反応を検討した。ナイロンのメタル化においては平衡結合メタル量とメトキシド濃度とは正の直線関係にあり,見かけの平衡定数はLi>Na>Kであった。メタル化反応は吸熱であり,反応熱はLi>Na>Kであり,見かけの活性化エネルギーは,Li<Na<Kであった。メタル化ナイロンのグラフト共重合においては平衡グラフト率はTHF,DMSOともLi<Na<Kであるが,DMSO中では THF中にくらべてグラフト率が数倍大きく,AN 40~60 vol %で極大を示し,極大点ではメタルによる差が少なくなる。グラフト率と結合メタル量との関係は両溶媒とも直線的であるが,THF中では Li<Na<Kであり,DMSO中極大点ではメタルによる差が少なくなる。重合の活性化エネルギーは THF中でLi<Na<Kであり,DMSO中極大点では Li>Na =K=Oであった。DMSO中でのグラフト鎖の分子量によると,Liの開始基効率は 0.7~1.5で数平均分子量は 7000~11000,Na,Kは効率が 3~5と高く,数平均分子量は 2000~4000である。ただし開始基効率とは計算された数平均分子量と測定されたものとの比とする。
  • 北川 浩
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1336-1341
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC),尿素樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂,サッカロース,木炭を原料としていろいろの条件で活性炭を製造し,その比表面積を測定した。活性炭の製造条件は炭化温度450~700℃,賦活温度750~1000℃,賦活時間0.3~18hrである。
    水蒸気賦活時の炭素の重量減少速度は,木炭については炭素の重量に関して0次であり,そのほかの炭化物については炭素の重量に関して1次であった。
    添加剤を含まないPVC粉末,硬質PVCパイプを窒素気流中で炭化した炭化物からは活性炭を製造することができなかった。一方,PVC粉末にステアリン酸亜鉛を5wt%加えたものは温度350~500℃で溶融せず,これを600℃で炭化した炭化物からは比表面積がおよそ2000 m2/gの活性炭を製造することができた。また,硬質PVCパイプを温度200~320℃で空気を流しながら脱塩酸して得られた炭化物を水蒸気賦活することによって,最大570m2/gの比表面積を有する活性炭を製造することができた。
    尿素樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂から製造した活性炭の比表面積は最大,それぞれ1300,800,2200 m2/gであった。
  • 鎌田 薩男
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1342-1345
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    P-クロロアニリン(PCA)のスルホン酸型イオン交換樹脂への吸着速度を数種の有機溶媒(メタノール,エタノール,1-プロパノール,1-ブタノール,DMF,DMSO,1,2-ジクロロエタン,酢酸エチルおよびベンゼン)の系で検討した。この結果,PCA吸着速度の律速段階はどの溶媒中でも樹脂粒内拡散であることがわかった。またこの場合の拡散係数(D)は溶媒の性質や樹脂の構造に関係し,Dowex50 WX 8では0.57 × 10-8 ~ 83 × 10-8 cm2,min-1およびAmberlyst 15で 0.27 × 10-6 ~ 3.76 × 10-6 cm2,min-1であった。さらに樹脂内拡散の拡散係数におよぼす溶媒の影響を知る目的で,両樹脂に対して溶媒捕捉量および溶媒の粘度の影響についても若干検討した。
  • 早川 忠男, 近藤 慶之, 山田 具由, 中川 晴蔵
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1346-1349
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(Nε-ペンジルオキシカルボニル,Nε-p-メチルペンジル-L-リシン)〔1〕とポリ(Nδ-ペンジルオキシカルボニル,Nδ-p-メチルベンジル-L-オルニチン)〔2〕をN-カルボン酸無水物法でつくり,ついで,それぞれ臭化水素処理によりポリ(Nε-p-メチルペンジル-L-リシン)(3)とポリ(Nδ-p-メチルベソジル-L-オルニチン)〔4〕を合成した。4種のポリマーについて赤外吸収スペクトル(IR),X線写真,旋光分散(ORD),円偏光二色性(CD)などの測定により,それらのコンホメーションを検討した。ペンジルオキシカルボニルで保護されたポリマー〔1〕,〔2〕のIRおよびX線測定ではα-ヘリックスに特徴的な吸収および図形を示し,またクロロホルムおよび2-クロロエタノール中のORDおよび,CD曲線も右巻きα-ヘリックス構造を示唆した。クロロホルム-ジクロロ酢酸(DCA)混合溶液中のヘリックス コイル転移が〔1〕では7%(v/v)DCA,〔2〕では8%(v/v)DCAで観察された。〔3〕および〔4〕は水-アルコール(1:1)溶液中でpH 3.0~7.0の範囲でランダムコイルであるが,両ポリマーは pH 約7.5でα-ヘリックスに転移する。
  • 高橋 勉, 原 公彦, 大杉 治郎
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1350-1352
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The self-condensation of cyclohexanone (1) and its methyl substituted derivatives was investigated under pressure of 20-50 kbar and temperature of 160-300 C without solvent and catalyst. It was found that (1) yielded 2-cyclohexenylcyclohexanone (2), 2-cyclohexylidenecyclohexanone (3), 2, 6-dicyclohexenylcyclohexanone (4) and dodecahydrotriphenylene (5). (5) was a main product at high pressure and high temperature. While 2, 2'-methyl-(2methylcyclohexenyl)-cyclohexanone (7) was obtained from 2-methylcyclohexanone (6). The reactivity of 2, 6-dimethylcy clohexanone was also examined and no product was obtained under pressure of 20-50 kbar and below the temperature of 250 C.
    This condensation seems to occur in liquid state and to proceed through a series of aldol condensation followed by dehydrations. This scheme was confirmed from pressure effects, but the mechanism of this condensation cannot be explained merely by pressure dependence of auto-protolysis.
  • 小島 英幸, 勝野 淳子, 都竹 柳子, 堀 芳美
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1353-1355
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Ethyl methyl ketone flowing through a layer of neutral alumina undergoes self-condensation on the methyl group to 5-methyl-4-hepten-3-ope at room temperature. By using the same method, acetophenone forms dypnone, and diethyl ketone forms 4-methyl-5-ethyl-4-hepten-3one, but self-condensation of propiophenone does not proceed (Table 1). In the same manner, ethyl methyl ketone, acetophenone and diethyl ketone condense with benzaldehyde to form benzalmethy1 ethyl ketone, chalcone and 2-methyl-1-phenyl-1-penten-3-one, respectively. Propiophenone does riot condense with benzaldehyde (Table 2). As mentioned above, aluminacatalyzed aldol condensation occurs by attack of the carbonyl group on the less hindered α carbon atom. According to Abbott's and Harries's reports, ethyl methyl ketone undergoes aldol condensation on the ethyl group with acid catalysts. On the other hand, the same ketone undergoes aldol condensation on the methyl group with basic catalysts. From these results described above, it is concluded that the, active site of alumina for the aldol condensation is the base site.
  • 海妻 彦之, 山北 逸郎
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1356-1358
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Several experimental results for the liquid penetration through filter paper may be classified into the ideal and non-ideal types. The square law or the parabolic flow law is strictly applicable on the ideal type. Some of the non-ideal types can be brought into the ideal one by correcting only the penetrating distance by an amount of h o estimated according to the authors' method. The validity of above assumption was confirmed from the linear relation between positions of the origin of measurement and correcting values (h0) on the penetrating distance.
  • 古川 靖, 面谷 孝治, 岩切 三雄
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1359-1361
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/11/21
    ジャーナル フリー
    The reaction of boron trifluoride-methanol reagent with trans-3-decenoic acid was studied.
    Reaction products were isolated by means of distillation, column and gas chromatography. Their structures were determined by IR, NMR, MS spectra and chemical analyses.
    In this experiment, the following compounds have been identified: methyl trans-4-decenoate (1), methyl trans-3-decenoate (2), methyl 4-methoxydecanoate (4), methyl 5-methoxydecanoate (5), 4-decanolide (6) and 5-decanolide (7).
  • 横山 正孝, 宮島 重明, 加藤 和夫
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1362-1363
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of several dithiocarboxylic acids with 2, 4-dinitrochlorobenzene was investigated. The dithio acids with α -hydrogen reacted with 2, 4-dinitrochlorobenzene to give 2, 2', 4, 4'tetranitrodiphenyl sulfide. Whereas, the dithiocarboxylic acids without α -hydrogen on carbon atom gave 2, '2', 4, 4'-tetranitrodiphenyl disulfide, and those without α -hydrogen on nitrogen atom gave dinitrophenyl ester of the dithiocarboxylic acids.
  • 坂根 和夫, 大辻 吉男, 井本 英二
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1364-1366
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Two new heterocyclic compounds, 3-ethoxycarbonyl-5-azaacenaphthene-1, 4(5H)-dione-1ethylene acetal (1) and 3-ethoxycarbonyl-5-azaacenaphthene-1, 4(5H)-dione-1-ethylene dithioacetal (2), were synthesiized from 4-nitroindan-1, 3-dione via 4-ethoxycarbonylacetamidoindan1, 3-dione-1-ethylene acetal (5) and -1-ethylene dithioacetal (7), respectively.
  • 田辺 敏夫, 石川 延男
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1367-1369
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Six tetrafluoroisoindolinone pigments (4) (No.1-6) were prepared by condensation of tetrafluorophthalimide (1) and aromatic diamines (F3). The properties of these fluorinated pigments (4) were compared with those of corresponding tetrachloroisoindolinones (5). In general, the colors of the fluorinated pigments were more hypsochromic and the fastness to light and solvents was inferior to these of the chlorinated pigments.
  • 上原 巳芳, 中谷 純一
    1974 年 1974 巻 7 号 p. 1370-1372
    発行日: 1974/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The transimination, XCH=N-CH2Y(I) - XCH2-N=CHY(II), was investigated polarographically. In a weak alkaline solution, the rearrangement from I (two one-electron reduction waves) to II (one two-electron reduction wave) was found in the reaction of N-methyl4-formylpyridinium iodide with glycine. On the other hand, the reaction of N-methyl-4aminomethylpyridinium perchlorate with glyoxalic acid resulted only in the formation of II. In connection with transimination, two oxidation waves appeared. The negative one, having a corresponding AC polarographic wave, seems to correpond to the oxidation of the I -carbanion, and the other to the oxidation of II.
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