日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
シラスを主原料にしたNa2O-B2O3-SiO2-Al2O3-CaO系ガラスの分相におよぼず化学組成と熱処理条件の影響
中島 忠夫黒木 裕一
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 1981 巻 8 号 p. 1231-1238

詳細
抄録

シラスをおもな原料にして調製されたNa2O-B2O3-SiO2-Al2O3-CaO系ガラスの分相におよぼすAl2O3またはCaO添加の効果と熱処理条件の影響を検討した。実験はまず目的にかなった種々の組成の基礎ガラスをつくり,これをいろいろな条件で熱処理したのち,酸処理した。得られた多孔質ガラスに化学分析や水銀圧入式ポロシメーターを用いた細孔分布の測定,走査電子顕微鏡による細孔の形態観察およびBET表面積の測定を行ないつぎの結果が得られた。
1)Al2O3が増加すると分相が起こり難くなり,液滴型の分相構造を形成する傾向がみられた。CaOを増加すると逆に分相が容易に起こりからみ合い型の分相構造を形成した。またAl2O3が15%以上含まれる高アルミナガラスにおいてもCaOの添加量を増加することにより分相が顕著に発生した。
2)基本組成のガラスを700℃ で熱処理すると,からみ合い分相を生じ熱処理時間の経過とともに微相間の界面エネルギーが駆動力となって分相が次第に大きくなった。分相の大きさを示す多孔質ガラスの平均細孔半径r(Å)は熱処理時間t(h)の1/2乗に比例して増加した。
3)また同じガラスについて熱処理時間を24時間一定にして650℃ から730℃ に熱処理温度を上昇させると,多孔質ガラスの細孔径はいちじるしく増大し,平均細孔半径rと熱処理温度T(K)の関係から求められた分相の構造再編にともなう拡散の活性化エネルギーは143.2kcal/molであった。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top