日本化学会誌(化学と工業化学)
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高濃度水溶液中におけるモリブドリン酸の加水分解とリン酸の添加効果
青島 淳山口 辰男山松 節男
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1986 年 1986 巻 2 号 p. 113-119

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抄録

10%以上の高濃度12-モリブドリン酸 (PMo12) 水溶液を加温すると, MoO3を沈殿しつつ分解する現象があり, 実用触媒として用いる場合の問題となっている。本研究では, ラマンスペクトルと31P-NMRを用いた解析に基づき, この原因が, 水溶液中に18-モリブドニリン酸を生成することに密接な関係があることを明らかにした。さらに, この沈殿生成は適量のリン酸添加により, 抑止できることをみいだした。抑止効果は式 (1) の反応によることを示した。
3H3PMo12O40+H3PO4⇔2H6P2Mo18O62 (1)
式 (1) の反応は, 室温でも, 迅速に進む式 (2) の加水分解によって, 9-モリブドリン酸 (PMo9) が生成し, これが加温時に二量化する式 (3) の反応の2段階で進行すると考えると, よく説明できることを示した。
3H3PMo12O40+H3PO4+12H2O⇔4H3PMo9O31(OH2)3 (2)
2H3PMo9O31(OH2)3→H6P2Mo18O62+6H2O (3)
一方, 12-タングストリン酸(PW12)は, リン酸を加えても, P2W18を生成しなかった。これは, リン酸存在下でもPW9を生成しにくいことに起因するものと考察した。

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