日本化学会誌(化学と工業化学)
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N-アセチル-DL-ノルロイシンの有機アンモニウム塩のラセミ体構造とDL-アンモニウム塩の優先晶出法による光学分割
白岩 正吉田 裕一真島 公男黒州 秀基
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1986 年 1986 巻 2 号 p. 177-185

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抄録

ハμアセチル-DL-ノルロイシンのアンモニウム塩(DL-AM塩), メチルアンモニウム塩(DL-MA塩); エチルアンモニウム塩(DL-EA塩), プロピルアンモニウム塩(DL-PA塩), イソプロピルアンモニウム塩(DL-IPA塩), t-ブチルアンモニウム塩(DL-TBA塩)ならびに1, 1, 3, 3-テトラメチルブチルアンモニウム塩(DL-TMB塩)の優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。融点でのラセミ体の生成自由エネルギーおよび融点の二成分系状態図から, これらのDL-塩のラセミ体構造を調べた結果, DL-TBA塩のみが融点付近でラセミ固溶体であり, そのほかのDL-塩はいずれもラセミ化合物を形成していることがわかった。しかし, DL-AM塩とD-AM塩との赤外吸収スペクトル, 溶解度の比較, そして溶解度の三成分系状態図から, DL-AM塩が室温付近ではラセミ混合物として存在することが示唆された。そこで, DL-AM塩の優先晶出法による光学分割を, メタノール, エタノール, 1-プロパノールならびに2-プロパノール中, 10または25℃で試みると, メタノール中では良好な結果を得られなかったが, いずれのアルコ一ル中においても光学分割は可能であった。さらに, エタノール中, 10℃と, 1-プロパノール中, 25℃とでDL-AM塩の交互分割を行ない, いずれの場合においても, 光学純度が90%以上のD-およびL-AM塩を得ることができた。また, 光学分割におよぼす溶媒の影響を調べるために, DL-およびD-AM塩のこれらのアルコール性飽和溶液の熱力学的性質について調べた結果, エタノール, 1-プロパノールならびに2-プロパノール溶液を正則溶液とみなすことができるが, メタノール溶液中では, メタノール分子とAM塩との聞にきわめて強い求引相互作用が存在することが示唆され, このような相互作用の存在はDL-AM塩の光学分割に対して好ましい影響を与えないと考えられた。

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