日本化学会誌(化学と工業化学)
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多摩川水系における微量元素の挙動
鈴木 章悟平井 昭司
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1987 年 1987 巻 9 号 p. 1678-1684

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抄録

機器中性子放射化分析法(INAA)により多摩州水系に溶存している微量元素の分析を行なった。採水は3年間にわたり,多摩州の上流から下流までの15地点について行なった。採水は各地点とも6回程度行なった。
採水した試料は溶液のまま原子炉で直接照射する方法と凍結乾燥して照射する方法で行なった。照射は武蔵工大炉の照射溝,気送管および中央実験管で行なった。照射後,適当な冷却時間を置いて,Ge(Li)検出器とコンピューター付マルチチャネル波高分析器(GAMAシステム)によりγ線スペクトルの測定を3回行なった。
分析を行なった結果,25元素が定量できた。結果はどの元素も季節,天候状態および前処理方法の違いに関係なくほぼ一定の濃度を示していた。大部分の元素が上流域から中流域にしたがって濃度が上昇していく傾向があった。さらに羽村堰から下流では一段と高い濃度になった。
微量元素のなかでもとくに臭素については下流域で急激な増加を示していた。塩素と臭素の濃度比は羽村から上流域では240~900となり塩素濃度が高いが,羽村から下流域では濃度比は50~160と低下し,臭素濃度が相対的に高くなった。このことは人間生活による影響と考えられる。

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