1987 年 1987 巻 9 号 p. 1685-1690
Townsend放電(TD)を用いる化学イオン化(CI)質量分析法における試薬ガスについて酸素および通常のCIで汎用されるメタン,イソブタン,アンモニアを用いて基礎的検討を行なった。酸素はきわめて安定した放電を示し,酸化物イオンO+,O-および超酸化物イオンO2+,O2-を効率的に生成した。メタンでは安定放電領域はイオン化室圧力と放電電圧に依存し二つの部分に分かれたが,反応イオンの組成はTDモードでC4H1+やC4H9+ がわずかに生じるなどフィラメントモードとの違いもあったが,全体的に両者は類似していた。イソブタンの安定放電領域は非常に狭かったが反応イオンの組成はフィラメントモードのそれとほとんど同じであった。アンモニアでは安定放電領域はメタンと同じく二つに分かれたが,生成した反応イオンの相対強度比はフィラメントモニドのそれとは異なりクラスターイオンの割合が少なかった。またメタンを試薬ガスに用いた場合,CIスペクトルの再現性および定量のさいの精度の目安となる検量線の直線性は良好で,TDモードとフィラメントモードではほとんど同じレベルであることがわかった。
この記事は最新の被引用情報を取得できません。