日本化学会誌(化学と工業化学)
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電子供与性アゾール触媒による電子受容性エステルの加水分解-非古典的Michaelis-Menten機構-
武石 誠矢萩 和弘奥山 光作益山 嘉通佐藤 力哉
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1992 年 1992 巻 11 号 p. 1356-1362

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抄録
1-naphthyl3,5-dinitrobenzoateの加水分解において,1,2,3-ベンゾトリアゾールがpH7~10の領域で反応を健進するがapH12以上では反応を抑制した。この高pH領域での反応抑制は,1,2,3-ベンゾトリアゾールの脱プロトンにより生じた電子供与性のアニオン種がこの電子受容性エステルと負電荷をもつ電荷移動錯体を形成するために,水酸化物イオンの攻撃が静電反発を受けて,加水分解が阻害されるためと考えられる。pH7~10の領域でもこの錯形成による反応阻害は同様に起こっているが,遊離の1,2,3-ベンゾトリアゾリドアニオンがエステルを二分子的に求核攻撃して反応を促進するので,水酸化物イオン濃度が低いpH領域では1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加により,エステルの加水分解速度は大きくなると推定される。速度式は酵素反応におけるMichaelis-Menten機構の場合と同様な双曲線関数となるが内容は異なり,これはMengerにより仮定された,非古典的Michaelis-Menten機構に相当するものである。
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